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原因物質は40代から蓄積する?認知症リスクを抑える「4つの習慣」

2023年02月02日 公開

広川慶裕(ひろかわクリニック院長)

 

食は「高タンパク・低糖質」を意識する

広川慶裕 食べ物

若々しい脳を維持するためには、食事面の改善も欠かせません。まずはとにかく「高タンパク・低糖質」の食事を心がけましょう。

タンパク質を摂るには、肉や卵、魚などの摂取が欠かせません。大豆などの植物性タンパク質も悪くはありませんが、ぜひ動物性のタンパク質を優先的に摂取してください。

というのも、栄養源としてのタンパク質の質を評価するプロテインスコア(100に近いほど良質)を見ても、鶏卵とシジミが100、牛肉が96なのに対して、大豆はたった80。単純に、栄養効率が悪いのです。

私は、クリニックの患者さんたちに「卵は1日3つ食べるように」と指導しています。かつては「卵を食べるとコレステロール値が上がって身体に悪い」というのが定説でしたが、今やそれも過去の話。

存外エビデンスが弱いことが明らかになり、厚生労働省も「卵の摂取量で各種疾患への罹患率が上がる、という相関関係はない」と正式に否定しているんです。私自身、服薬が必要なほどの高コレステロール家系ですが、卵は毎朝3つ食べるようにしています。

また、必須脂肪酸に着目し、「良い脂質」を摂取することも重要です。必須脂肪酸とは、体内では生成できず、食べ物から摂るしかない栄養素のこと。これが豊富な油には、例えば青魚に含まれるDHAや、アマニ油、オリーブオイルなどが該当します。逆に、サラダ油やマーガリンなどは摂りすぎ注意です。

食材で言えば、サバ缶などはリーズナブルで、しかも1日に必要な必須脂肪酸を1缶でほぼカバーできる、超優秀な食材と言えます。

料理のときに使うサラダ油をオリーブオイルに切り替えたり、寝る前にティースプーン1杯の「MCTオイル(中鎖脂肪酸油)」を直接摂取したりするのが良いでしょう。「脂質は一律控える」ような食生活は、正しいとは言えません。

 

症状の進行は「早期発見」がカギ

ここまで脅かすようなことばかり言ってしまいましたが、仮に老廃物の蓄積が進んでしまっても、希望を捨てる必要はありません。

というのも、認知症には、診断が下る以前に、軽い物忘れなどの症状が出てくる「軽度認知障害(MCI)」と呼ばれる段階があるからです。脳の萎縮はあるものの、まだ生活には支障が出ていない状態ですね。

実は、こうした段階で適切な対策をすれば、多くの場合「認知症」への進行を食い止めることが可能です。十分早期に発見すれば、健常な状態に戻れたという報告も多数あります。

実際、私もクリニックで数百人以上の「MCI(もしくはより軽度のプレMCI)」状態の患者さんを診察し、そこからの対応策を指南してきましたが、そういった方の中で「認知症」の診断を出すまでに症状が進んでしまったのはわずか数名。早期の対策がいかに大切か、おわかりいただけると思います。

最後に、プレMCIの簡易チェックリストを載せておきますので、セルフチェックをしてみてください。5項目以上当てはまってしまった方は、ぜひ一度医師の診断を受けていただければと思います。

【「プレMCI」チェックリスト】
(1)メンタルの不調を感じやすい(気分が沈む、集中力が続かない)
(2)物忘れが増えた自覚がある
(3)仕事上、なんでもない凡ミスをする
(4)探し物が増えている
(5)疲れやすく、居眠りをしてしまうことも
(6)一度に多くのことを言われると、戸惑ったり頭が真っ白になる
(7)同じ人に無意識に同じ話をしてしまう
(8)話し始めの言葉が聞き取れず、聞き返すことが増えている
(9)嗅覚が鈍った感じがする
(10)慣れていることにもどこか違和感があり、馴染み感覚が薄くなっている 

【広川慶裕(ひろかわ・よしひろ)】
ひろかわクリニック院長。1955年生まれ。京都大学医学部を卒業後、麻酔科専門医・指導医を経て精神科医に。2014年、認知症専門の「ひろかわクリニック」を京都に開業し、同年「品川駅前MCI相談室」も開室。主な著書に『脳が若返るまいにちの習慣』(サンマーク文庫)、『図解でよくわかる 今すぐできる認トレで認知症は予防できる』(河出書房新社)などがある。

(『THE21』2023年1月号特集「40代・50代から衰える脳 伸びる脳」より) 

 

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