2026年04月20日 公開

連載「やることが多すぎる管理職の"ラクになる思考法"」では、経営者やリーダー育成に携わる中尾隆一郎さんがマンガと文章を通して、プレイングマネジャーが成果をあげるために"部下が自律自転できる仕組みづくり"を解説していきます。
「とにかく一生懸命やれば、いつか報われる」――そう信じて、連日の残業や休日出勤でカバーしていませんか?
前回の記事では、押し寄せる「問題」の中から本質的な「課題」を見極める重要性をお伝えしました。しかし、やるべき課題が見えたとしても、それを実行する「時間」がなければ意味がありません。
現代のビジネスパーソンに求められているのは、気合や根性による労働時間の拡大ではなく、「投資対効果(ROI)」の視点で仕事を最適化する技術です。
(マンガ:オケ)
【今回の登場人物】
荒巻課長(42):優柔不断で頼まれると断れない。今の状況を抜けだそうと奮闘している。愚痴っぽい。





かつての時代は、時間が足りなければ「気合」で労働時間を増やして解決できました。しかし、今はタイムマネジメントの厳格化が進み、単純な「時間の切り売り」では限界がすぐにやってきます。
限られた24時間の中で最大の成果を出すために必要なのは、自分の仕事を「作業」としてではなく、「投資(Investment)」と「リターン(Return)」のバランスで見つめ直す思考法です。
自分自身の時間という貴重な資本を、どこに投下すれば最大の利益が得られるのか。この「ROI(ReturnOnInvestment)」の視点がないまま働くと、いつまでも「忙しいのに評価されない」という泥沼から抜け出せません。

まずは、あなたの抱えている膨大な業務を、以下の2つの軸で棚卸ししてみましょう。
縦軸:期待される成果(Return)その仕事は、チームの目標達成や業績にどれだけ直結しますか?(高・低)
横軸:必要な投入量(Investment)その仕事には、どれだけの時間や精神的エネルギー、工数がかかりますか?(多・少)
この2軸を組み合わせると、すべての仕事は以下の4つのボックスに分類されます。
【ROI:大】(成果:高×時間:少)少しの手間で大きなインパクトを生む「おいしい仕事」。
【ROI:不明】(成果:高×時間:多)成果は出るが、とにかく手間がかかる「大変な仕事」。
【ROI:不明】(成果:低×時間:少)すぐ終わるが、大きな成果にはならない「雑務的な仕事」。
【ROI:小】(成果:低×時間:多)成果が出ないのに、時間ばかり食う「無駄な仕事」。
マトリックスに自分の仕事を配置したら、次は具体的なアクションに移ります。
ステップ1:「ROI:小」の仕事を『やめる』
真っ先に着手すべきは、成果が低いくせに時間がかかる「無駄な仕事」です。「そんな仕事、自分はやっていない」と思うかもしれませんが、客観的に見直してみてください。
・形骸化した定例会議への出席
・誰も読んでいない、あるいは誰も活用していない長文の日報
・「念のため」という理由だけで作り続けている大量の参照用資料...これらは改善を試みるのではなく、「勇気を持ってやめる」ことが唯一の正解です。ここをカットするだけで、驚くほどまとまった時間が生まれます。
・全メンバーとの定期的な1on1を止めること...私の一番のお勧めです。どうしてもやらないといけない時に、その都度だけやるに変更すると、毎週数時間空き時間が生まれます。
ステップ2:「ROI:不明」の仕事を『絞る』
次にメスを入れるのは、成果は高いが時間がかかりすぎる仕事です。これをそのまま続けていては、いずれあなたがパンクします。ここで必要なのは、対象を「絞る」戦略です。
例えば、「顧客全員に手厚いフォローをする」のをやめ、「重要顧客や伸び盛りのクライアントに限定する」。あるいは「網羅的な市場調査」を「特定のターゲット層に特化」させる。「広く、深く」を「狭く、深く」に変えることで、この仕事を「ROI:大」の領域へと移行させるのです。
ステップ3:「ROI:大」の仕事を『見直す』
最後に、最も効率が良いはずの「おいしい仕事」も点検します。「もっと短時間で、もっと高い成果を出す方法はないか?」とカイゼンの視点を持ち続けることで、あなたの生産性は極限まで高まっていきます。
真面目なビジネスパーソンほど、「仕事を減らすこと=サボること」だと感じ、罪悪感を抱きがちです。しかし、ROIが低い仕事に時間という資産を使い続けることは、実は組織に対する「背任行為」であると心得てください。
なぜなら、その時間をROIの高い仕事に使っていれば、チームや会社により大きな利益をもたらすことができたはずだからです。
「忙しい」という感覚は、時として充実感という名の麻薬になります。「頑張っている自分」に酔ってしまうと、ROIの低い仕事に逃げ込んでしまいがちです。本当の誠実さとは、全部を頑張ることではなく、「最も成果が出る場所に、自分の全力を注ぐこと」なのです。
ROIを意識して仕事を整理すると、スケジュールに「空白」が生まれます。その空白こそが、あなたが本来やるべき「未来の仕込み」や「チーム会の準備」「戦略的な思考」に充てるための貴重な資源となります。
あなたの忙しさの正体は、仕事の量そのものではなく、「ROIが低い仕事」に時間を奪われていることにあります。
特に上述した定期的な1on1を止めて、皆で集まるチーム会を活性化できれば、ROIはさらに高まります。
【今日からできるアクション】
まずは、今週の予定をROIマトリックスに書き出してみてください。そして、「ROI:小(成果低×時間多)」に分類された仕事を、明日一つだけ「やめて」みてください。
「やめた」としても誰にも文句を言われないどころか、誰も気づかないことさえあるはずです。その時、あなたは「いかに自分が無駄なことに命の時間を使っていたか」に気づくでしょう。
更新:07月14日 00:05