2012年04月17日 公開
2024年12月16日 更新
“ジャパンブランド”の代表ともいえるソニー。海外の街並みに「SONY」の看板を見つけて、なんだか誇らしい気持ちになった経験のある人は決して少なくないはずだ。
だが、残念なことに、その輝きはかつてと比べて色褪せてしまっている感は否めない。そしてそれはソニーだけでなく、その隣りに看板を掲げている日本企業も同じだろう。ソニー、そして他の日本企業がその輝きを再び取り戻すにはどうしたらいいのか。
『THE21』2012年5月号の「特別企画:ソニーはどうすれば復活できるのか?」に登場いただいた各界のプロ4名が示してくれた処方箋をもとに、まとめてみた。
「愉快」を追い求める
「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」――。
1946年、創業者の1人である井深大氏が起草した「東京通信工業株式会社設立趣意書」 (※東京通信工業〔株〕は、1958年にソニー〔株〕に社名変更した)で、「会社設立の目的」の第一に掲げられた言葉だ。ソニーの原点を語る際に必ず引き合いに出されるこの言葉に、やはりもう一度立ち返るべきではないか。
田中靖浩氏(公認会計士、東京都立産業技術大学院大学客員教授)がソニー製をはじめとした日本の家電製品をみて、「これをつくっている人たちは楽しくないだろうな」と感じたように、いまの日本の仕事の現場は「数字」や「利益」を重視するあまり、本来あるはずの「仕事をする喜び」を失ってしまっているようにみえる。
1つの製品やサービスに関わる人や要素が、昔と桁違いに増えた現代で仕事の楽しさを追求するなどといえば、理想論と笑われるかもしれない。
だが、つくっている人が楽しくないものは、他人を楽しませることができないのも、またたしかなことだ。ソニーにかぎらず、多くの日本企業は、いま一度この真実に向き合うべきではないだろうか。
「自分たちが欲しいもの」をつくる
では、社員たちが「仕事を楽しむ」にはどうしたらいいのか。それには、前刀禎明氏(〔株〕リアルディア代表取締役社長)が提案しているように、「社員が買いたくなるモノづくりにこだわる」ことが糸口になる。
多くの企業では、市場調査をもとに「売れそうなもの」をつくるマーケット・インの考え方を重視している。たしかに、ニーズをつかみ、それに合わせたモノやサービスを供給することは大切なことだ。しかし、現代の消費者の周りにはモノが溢れていて、足りないものはほとんどない。消費者自身が欲しいものがわかっていないのだから、彼らの声に応えても画期的な新製品を生み出すことはできないだろう。
逆に、市場調査を過度に重視すれば「安いほうがいい」というわかりやすいニーズに押し切られ、価格兢争に巻き込まれてしまうことになる。それでは日本の会社に勝ち目はない。
だから、ソニーをはじめとした日本の会社は、自分たちが欲しいと思うものづくりに徹するべきだ。その道を突き詰めてこそ、戸田覚氏(ビジネス著作家、〔株〕アバンギャルド代表取締役社長)のいうような「ユーザーの想像を超える画期的な製品」に辿り着くことができるのではないだろうか。
「中間管理職」が奮起する
企業の業績が振るわなければ、経営者が責任を取るのは当然のことだ。ソニーに関しても、近年の不振の原因を経営トップの手腕に求める声は多い。
しかし、「経営者が悪い」といっているだけでは会社は変わらない。手遅れになる前に、社員が自ら行動を起こすべきではないか。田中靖浩氏が「改革の主人公は中間管理職」と語っているように、現場を知り、経営的な視点に立つこともできるミドルマネジメントが率先して旗を揚げるのである。そして会社は、「社員が集中して仕事に取り組める環境を整備することに力を入れるべき」(西田宗千佳氏:ITジャーナリスト)なのだ。
アップルを例に挙げるまでもなく、他を圧倒する製品は、個人やごく少人数の熱意を母胎としなければ生まれない。自分たちが何とかしてやろうという自発的なプロジェクトが生まれ、それを会社が後押しできるかどうか。ソニーや、いま不調に陥っている日本企業が復活するカギはそこにかかっている。
更新:04月19日 00:05