副業は、金銭収入を伴う、本業とは別の仕事です。かつて日本企業では、自社の仕事が疎かになる、あるいはトラブルが生じかねないとして、副業禁止のケースが多く見られました。
この風向きが大きく変わったのは、2018年に厚生労働省から発表された「副業・兼業の促進に関するガイドライン」です。
これをきっかけに、多くの企業で副業が認められるようになりました。今や、副業で金銭を稼ぐのみならず、新しいスキルを伸ばす、あるいは人脈を構築することは、多くのビジネスパーソンにとって大きな課題となっています。
企業にとっても、労務管理の難しさといった課題等はあるものの、従業員のスキルが伸びるのは好ましいことであり、副業OKを打ち出すことで採用力が上がるなどのメリットも期待されます。
では、ビジネスパーソンはどのような副業を行えばいいのでしょうか。ここでは、比較的ホワイトカラー色の強い企業に勤めるビジネスパーソンをイメージして考えます。
あまり好ましくないのは、単純作業の割には時間を取られる仕事です。金銭を稼ぐことを主目的とする場合など、あらゆるケースで否定されるわけではありませんが、こうした単純作業は新しいスキルの獲得につながりにくいからです。
望ましいのは、自分の強みが活かせる、さらには伸ばせる仕事をすることです。例えば記者であれば、ライター的な副業は好ましいと言えます。あるいは、英語など外国語が得意な人であれば、翻訳や通訳、旅行案内などの仕事があります。
会社での職位が上がるほど、より高いレベルの副業にチャレンジしてみたいものです。例えば部長クラスであれば、他社の社外取締役や顧問などです。企画室の人であれば、コンサルティングなどに挑戦してみるのもいいかもしれません。
こうした仕事は、ビジネスパーソンの視野を広げるとともに、スキルを一気に上げてくれる可能性があるからです。時間拘束が長くなりすぎない範囲で、あえて今までと毛色の違う人々と触れる機会を作るのも効果的です。
副業の探し方については、2030年にはマッチングアプリがさらに進化し、簡単に利用できるようになっているでしょう。ただし注意すべきは、自分にある程度の能力がないと他の希望者との競争に負けて仕事を得られない、あるいは、安く買いたたかれてしまうということです。
それを避ける方法は、単純ではありますが、自分の実力をまずは高めることです。好ましいのは、100人に1人、1000人に1人の力をつけることですが、それは簡単ではありません。
その時に重要な考え方が、掛け算による希少性です。いきなり100人に1人の能力を持つことは難しくても、10人に1人の能力を2つ掛け合わせれば、それと同じ希少性を持つことができるのです。
結局のところ、おいしい副業はそう簡単には見つからないものです。本業で自分の力をつけてしっかり実績を残すからチャンスが増すと思うべきです。そのためにも、日頃からの能力開発や人脈作りの必要性が増すと言えます。
昭和的なサラリーマンには、どっぷりと仕事につかる(言い換えれば、会社に依存する)人が少なくありませんでした。しかし、2030年はそのような時代ではありません。家庭や地域への貢献も強く求められていくことになります。
まず家庭については、男性が家事や育児にもっと貢献することが期待されます。数年前の調査では、日本は主要国の中でも「男性が家事・育児をしない国」で、10%台後半と圧倒的な最下位でした。お隣の台湾や 韓国に比べてもかなり低い数字です。
それに対し、男性が家事・育児に関与する割合が高いのはやはり北欧諸国が多く、40%台を越えます。日本人、特に男性の意識が変わらないままでは、女性活躍などは、結局、絵に描いた餅に終わってしまいます。
ただし、明るい兆しもあります。それは、年齢が若い世代ほど、男性が家事・育児をすることに肯定的だということです。この流れが続けば、男性の家事・育児への関与は強まるでしょう。
ただ、相変わらず問題として残るのは、男性の家事スキルの低さです。特に料理のスキルの低さは問題です。これは、フードテックなどのテクノロジーで解消できる部分も大です。掃除もロボット掃除機のおかげでかなり楽になりました。使えるテクノロジーはどんどん取り入れましょう。
女性サイドも、最初は男性の家事効率の低さをあまり責めないことです。「上級者」から見ると、どうしても初心者の仕事ぶりは非効率に見えますが、責めても問題は解決しません。
会社での仕事同様、思い切って任せる、根気強く教えるという姿勢が必要です。また、男の子にも、小さいうちからどんどん家事を手伝わせるようにしましょう。それが、長い目で見た時に、女性活躍の場を広げることにつながります。
また、地域への貢献も大事になります。都市部はさまざまなサービスがあるので、その必要性は多少低くなりますが、人口減、高齢化が進む地方では、地域への貢献が住みよい社会を作るうえでますます大事になります。
地域貢献の代表としては、経済振興、文化の維持・振興、医療・福祉、治安・防災、教育などが典型です。これらは、その気があれば始められるものばかりです。
個人で取り組むことも重要ですが、会社を巻き込んで、会社として貢献することも可能です。金融機関であれば、子どもに金融教育を行うなどです。ボトルネックになるのは時間のなさかもしれません。
仕事もして、家事・育児もして、社会貢献もして、となると、確かに大変かもしれません。だからこそ、会社では業務を効率化し、生産性を高める必要があるのです。
幸い、2030年頃には、ビジネスパーソンの評価は時間ではなく結果という趨勢が、より進んでいると思われます。短い時間で仕事で結果を出し、家庭や地域にも貢献するビジネスパーソンこそが、優秀であるという認識を、社会全体として広げていくことが必要でしょう。
更新:11月22日 00:05