2022年04月05日 公開
2022年07月07日 更新
NFTは「トークン」の一種なのですが、実はこの「トークン」を使った「クリエイターエコノミー」という考え方が、現在注目されています。
例えば、誰かアイドルがデビューする際、一種のファンアイテム、もしくはその人個人の「株」のようなものとして、トークンを発行することができます。ファンに1枚100円で売るとして、もし1000人が買ったなら、アイドルに入るのは10万円です。
もしそのアイドルが人気になれば、そのトークンを欲しがるファンも増えていきます。市場原理で価格は上がり、100円だったトークンが数百倍以上の値になるかもしれません。
これまではデビューしたてのアイドルを応援しても、ファンにはリターンがありませんでした。それが、もしトークンを買ってから応援すれば、そのアイドルの成長に伴ってトークンの価値が上がり、実利的なリターンまで受け取れるようになるのです。
そうなれば、アイドルを応援することの価値は、単に曲を買い、テレビや配信や映画を観て楽しむことだけではありません。スタートアップ企業が株式を発行するように、個人がトークンを発行する。株式を発行するよりもトークンを発行するのは簡単ですから、場合によっては人だけでなく、楽曲などに紐づくトークンを発行する選択肢もあるでしょう。
旧来の資本主義は、経営者などの資本家は株式で儲けられる一方、労働者は給料だけ、という傾向がありました。しかし、NFTも含めた「トークン」には、世の中の誰もが相互にパトロンとなる「パトロン民主主義」とも呼べる社会を実現できる可能性があるのです。
メタバースにしろNFTにしろ、「中央集権や一極集中から分散へ」という現代のトレンドに沿ったもの。この流れが今後さらに強くなっていく可能性は、やはり押さえておかなくてはなりません。
どちらの技術も知らないからと無視するのではなく、要点をつかんで行き先を気にしておくぐらいは、『THE21』読者の皆さんならぜひともやっておくべきでしょう。
【佐々木俊尚(作家/ジャーナリスト)】
早稲田大学政治経済学部政治学科を中退後、1988年毎日新聞社に入社。一貫して「事件」畑を歩き、オウム真理教事件をはじめとする多くの大事件・大事故を取材した。99年、IT 系出版社へ移籍。以降は新聞記者時代に培った取材力と情報通信分野の知識を駆使し、ネット犯罪分野で多数のスクープを放つ傍ら、ブログでの発信にも注力。現在は深い知見を下敷きに、多様なテーマで発信を行なう論客として知られる。主な著書に、『読む力 最新スキル大全』(東洋経済新報社)などがある。
(※『THE21』2022年5月号第2特集「先駆者たちに聞く! メタバース・NFTは世界をどう変えるのか」より)
更新:11月22日 00:05