2022年04月05日 公開
2022年07月07日 更新
アメリカの経済学者エドワード・グレイザーは、著書『都市は人類最高の発明である』(山形浩生訳、NTT出版)の中で、都市の価値とは多くの人々が集まって雑談することにある、としています。「この分野は面白そうだ」「ビジネスにするとしたらどうしようか」という雑談こそ、イノベーションを生み出す鍵だというのです。
もし、それが本当なら、メタバース空間で現実と変わらない雑談ができるようになれば、私たちが都市を維持する必要も半減するかもしれません。それぞれが好きな場所で気ままに暮らし、雑談や議論はメタバース内で行なう、という世界です。
実際にメタバース内で現実と相違ない会話ができるようになるのは、早くて5年後ぐらいでしょうか。その頃にはVR機器もより安価になり、周辺技術も進化して、現在よりもずっと軽く、つけっぱなしでも日常生活に支障がない形へ進化していることだって十分にあり得ます。
メタバースが昨今唐突に「ライフスタイルを大きく変える」と騒がれ始めた理由は、メタ社による巨額の投資発表や、それに伴う業界の活性化により、以前から囁かれていたこのような未来が、いよいよ現実味を帯びてきたからなのです。
さて、ここからはNFTについてお話しします。NFTのベースは「ブロックチェーン」と呼ばれる技術です。取引の台帳を分散し、同時並行で無数のコンピュータ上に置いておくことを可能にした技術、と表現することができるでしょうか。
技術面の詳細は今回省きますが、ブロックチェーンの長所は情報の「確かさ」を非常に強力に担保できるにも関わらず、信頼性の鍵が「分散」にあることから、「管理者」となる会社や個人が必要ないという点です。
巷でよく「ビットコイン(BTC)」という暗号資産を聞きますが、実はブロックチェーンは、このBTCを実現するために開発された技術とされています。たとえ国家が関与しないネット上のデータでも、抜群の信頼度さえあれば、通貨として成立するはず。ではその信頼度をどう担保するのか──ブロックチェーンの原点はそこにあります。
NFTも、根本的な原理はビットコインと同じものです。違うのは、一つひとつに固有性=非代替性があるかどうか。暗号通貨なら、自分が持っている1BTCと、他人が持っている1BTCは、同じ(代替可能)でなくてはいけませんよね。しかし、これをあえて「別物」と扱い、一つひとつ区別したい、そんなときに使うのが、このNFTという存在です。
デジタルアートは、デジタルゆえに無限にコピーができてしまいます。しかし、本来なら最初に作られた「原画」には価値があるべきですね。NFTは、そういった価値を担保するのに非常に適しています。
つまり、「どうにかデジタルアートの『オリジナル』に適切な価値を付与したい」、そんな市場の要請に応えて実用化された技術、と理解しておけばいいでしょう。
更新:11月22日 00:05