2022年03月28日 公開
2022年03月28日 更新
【近藤】もう一つ、京都信用金庫という企業に注目しています。色々な金融の形が増えている中でも、ユニークな地銀だと思います。
京都信用金庫は、もともと支店だった建物を複合ビルに立て替えて、「QUESTION」という施設を運営しています。もちろん、支店は中にあるんですけど、特徴的なのは窓口が6階にあることなんです。普通、入りやすいように1階に窓口を設けますよね?
なんでそんなことをしたかって言うと、「ネットでいろいろできる時代に、地域にとって大事な1階にあるってどういうこと?別に上でもいいんじゃない?」という理由だったそうです。
その代わりに、地域のコミュニティが活性化するよう、キッチンを設置したり、学生が無料で使えるスペースやレストランなど、地域にとって必要な機能を揃えた「コミュニティバンク」として機能しています。
しかも、その施設には京都信用金庫の名前はどこにも入っていません。
「QUESTION」と言うロゴしかない。ですから、一見すると京都信用金庫がやっているかどうかすら、わかりません。
「一体、なんでそんなことしてるんだろう?」と思ったら、次のような理念が基盤にあるようです。
銀行は、お金を集めて利ざやを稼ぐだけではいけない。そうではなく、地域全体を活性化すれば、街にお金が流れ、銀行も底上げされるはず。そのためには、金融機関が地域にとって果たすべき役割を担い、地域の課題を解決する。そういったコミュニティとしてのあり方が根底にあります。
面白いことに、コミュニティバンクという言葉も、現在代表を務める3代目の榊田氏の父親、つまり2代目が立ち上げたコンセプトなんだそうです。その考え方を3代目が引き継ぎ、現在求められる形にアップデートした。それが、現在の「QUESTION」です。
そうした地域機能を果たそうとする銀行の役割に、とても可能性を感じます。
【村上】ビジネスモデルが変わっていく中で、お金の流れがどう変化していくのか。私も勉強したいところです。
【近藤】単にお金をやり取りするだけじゃない、銀行がお金の結節点として果たすべき役割がますます重要になってきている。どんな企業にお金を流すべきか。そこがポイントです。
だからこそ、メガバンクが石炭火力に投資するみたいな話が批判され始めているわけですよね。世界全体から見たら反対の方向と言いますか、環境破壊するようなことに投資していたら儲からなくなるばかりか、NGOなど様々な団体から批判されて炎上リスクもあります。
そう考えると、銀行以上に金融機関全体がどう変わっていくのか。その動向に興味があります。
――『ビジネスモデル2.0図鑑』の「永遠に通用するモデルは存在しない」という言葉を思い出しました。
【近藤】そうですね。金融業界に限らず、既にいろいろな業界に様々な領域が侵食しています。いろんな専門分野の人がコラボレーションしていて、既存の領域も溶けつつあるイメージですね。
ちょっと話は逸れるかもしれませんが、そうした中で求められるのは、専門性を増すことではありません。かつては、それがインセンティブでしたし、それが成功する近道でした。しかし今は、専門的な知識も大事にしつつ、越境していくことを学ばなければなりません。
今必要なのは、異なる領域を理解するのに必要な「共通言語」です。専門分野同士、対話できる言語が求められているのですが、そこに共通言語がなくて、コミュニケーションコストがかかっている。
そのコストを減らすツールをつくりたいと考えています。そのために、多くの人が理解しやすい図解があるわけです。
何かを理解するために使っている時間って、もったいないと思いませんか?どんなに難しい物事でも、一瞬で理解できればそっちの方が良いと思います。
問題は、理解した後にどうするかです。新しい何かを生産することが大事なので、理解するためだけに使っている時間はコストです。
実はそういったコミュニケーションコストが様々な場面で起きています。そうしたコストを最小化して、新しい何かを生産することに最大限の時間を使えるよう変えていきたい。それが、「図解総研」のミッションでもあるのですが。
そうならないと、生産性も低いままですし、成長しません。そこに日本の大きな課題であると思います。
【村上】会計やファイナンスも、領域を越境する共通言語になるよう、より本質的に簡潔に広めていきたいところです。
更新:11月24日 00:05