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ゲーム感覚でたばこ問題解決! 当事者目線の発想で目指す 「ポイ捨てゼロ」の社会

2022年02月10日 公開
2022年02月12日 更新

山下悟郎(株式会社コソド代表取締役CEO)

 

利用者におしぼり渡し、改善に活かすリサーチ

山下悟郎

――他の喫煙所とはどのような違いがありますか。

「3点ありまして、1点目が排煙効率です。神田の店舗ですと40~50秒で1回、全容積の空気が入れ替わる空気清浄機を取り入れています。飛行機は約3分に1回の換気率なので、理論上は飛行機の300%以上の排煙効率と言えます。全店舗が有人なので、季節に合わせて最も快適な環境になるような、温度設定などのオペレーションも実施しています。

2点目が、喫煙所のデザインです。個人的に、一般的な喫煙所は、コストを抑えているため清潔感に欠けていたり、照明が暗かったり、あまりいいイメージがなかったのです。調査結果を踏まえて、弊社の喫煙所はデザインを重視。照明を明るめに設定して椅子やソファなどを配置して、清潔感があり、安全が守られるイメージを持っていただけるデザインにしました。

3点目が、実証実験をしつつ改善を繰り返していることです。一昨年や昨夏はコロナ禍で密を避けるため、喫煙所の外で順番待ちしていただくケースが多々発生しました。暑い中申し訳ないと、自腹で購入したおしぼりを手渡しつつ、様々なリサーチを直接行ないました。

喫煙所に期待することや、会社での喫煙事情はどうなのか……など、利用者の方々の意見をダイレクトに聞くことができました。街の需要に則した、次の喫煙所設置に活かしています」

――「ポイ捨て図鑑プロジェクト」という、たばこのポイ捨てを抑止する取り組みについても教えてください。

「ポイ捨てされた吸殻を撮影して命名し、捨てられた位置情報と併せて投稿と拡散を行なうというゲーム感覚の試みです。たばこが不快に思われる主な理由は受動喫煙と吸い殻のポイ捨てではないかと思います。愛煙家の1人としても、また企業としても、たばこ関連の事業を行なうからには、吸殻のポイ捨てと受動喫煙を減らしたいという思いを常々持っていました。

加えて、喫煙所の需要がどの設置場所で高いのかがわからないことも、このプロジェクトのきっかけとなりました。実際にたばこが消費されて、ポイ捨てされている場所のデータは、どの企業も未調査でした。

たばこを嗜む時間は、最大でも10分程度。ということは大体、吸殻のある半径100メートル以内で消費されていると予測し、そのデータを実証するためと、ポイ捨てされているたばこを可視化したいと考えたのです。喫煙所の設置や清掃活動など、次の施策のためのデータ収集に役立てる予定です」

――「図鑑」というユニークな形をとったのはなぜですか。

「『ポケモン』のようなイメージにしたかったからです。メインの喫煙者層は『ポケモン世代』を含む30~50代男性。それに、ポケモンなら今の20代など若い世代も知っています。興味を持ってくれる人が増えると予想しました。投稿に『いいね!』がつけば、承認欲求も満たされて、投稿数が増えるのではないか、という狙いもあります。

昨年12月に、東京・渋谷にオープンしたポップアップストアには、400人ほどの方々にご来訪いただきました。若い女性やカップルも多かったので、狙いは間違っていなかったと確信しました」

 

吸う人も吸わない人も共存できる社会を実現

――御社の事業を通じて、どのような社会を実現させたいとお考えですか。

「ありがたいことに現在は、東京都豊島区などから『一緒に何かできませんか』とお問い合わせをいただくようになりました。JR東日本が運営する、秋葉原駅の高架下の『SEEKBASE』にも出店させていただいていて、今年は他にも10店舗、出店予定です。必要な場所に喫煙所を設置して吸い殻のポイ捨てを減らし、たばこを吸う人と吸わない人が共存できる社会を地道に実現していきたいです」

・THE TOBACCO

非喫煙者と喫煙者が共存できる、新たな空間として設置。場所によってレイアウトは異なるが、「日本で最も心地よい喫煙体験を作ること」を目標に、近未来的なデザインを手がけている場所もある。喫煙者だからこそわかる、「喫煙所は煙い」という悩みを打破するべく、非常に高い排煙効率を持つ空気清浄機を設置。

しかも開放時間は有人で、季節や人数に合わせて換気をしてくれるため、快適な空間で喫煙できる。一服ついでに、長居したくなってしまうかもしれない。

・ポイ捨て図鑑プロジェクト

「たばこのポイ捨てをなくしたい」という、山下氏の熱意によって始まった企画。ポイ捨てされた吸殻を"喫煙所に戻れず、迷子になった吸殻モンスター "という助けるべき存在として描き、誰もが簡単にゲーム感覚で参加できるポイ捨て問題の解決を目指すプロジェクト。

ポイ捨てされた吸い殻を撮影して吸い殻に命名し、捨てられていた位置情報と併せて投稿と拡散を行なうことで、状況を可視化。集計データは、喫煙所の設置や清掃活動に活かしていくという。

 

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