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優秀で能力が高いはずの日本人ビジネスパーソンに「決定的に欠けているもの」

2021年07月16日 公開
2023年02月21日 更新

梅澤高明(A.T.カーニー日本法人会長/CIC Japan会長)

 

チャレンジする人を応援するビジネスも拡大する

三つ目は、自己実現や自己革新を支援する産業です。

個人が2度、3度とキャリアチェンジするには、新しいことに挑戦しながら、自らを進化させていくことが必要です。よって、社会人教育や起業支援などのビジネスは、さらに重要性を増すと考えられます。

先ほど紹介したイノベーションセンター「CIC Tokyo」も、社会や産業の課題解決にチャレンジする起業家を応援するための場です。最大250社を収容できるシェアオフィスを備えており、スタートアップや大企業、投資家などが集まるネットワーキングの場を提供しています。

そこでの交流から、スタートアップ同士で連携したり、起業家と大企業が協業したりといった動きも生まれています。

CICでは主にスタートアップの支援をしていますが、コンサルタントとしては大企業のイノベーション人材育成にも携わっています。

例えば、最近ある大企業で実施したのが、次世代の経営幹部候補を選抜し、一人ひとりが半年間をかけて新規事業構想を作成するというプログラムです。作ったプランは経営陣の前で発表し、評価が高いものは予算がついて事業化するチャンスを与えられます。

その会社のCEOは進歩的な考えの持ち主で、「トップの自分が高得点をつけなくても、本人がどうしてもやりたい事業なら、会社を飛び出してスタートアップとしてチャレンジすればいい」とのことなので、今後はそうした事例も出てくる可能性があります。

最初にお話しした通り、チャレンジできる人を増やすには、ハードルをできるだけ下げる必要があります。会社がプログラムを用意するのも、そのための手段の一つです。

たとえ大企業の社員でも、自分の意思で新しいことにチャレンジし、必要なら会社の外にも積極的に出ていく。こうした動きが日本でも活発化し、産業間の人の移動が促進されれば、日本の社会全体が成長していけるはずです。

 

日本人に足りないのは一歩を踏み出す勇気だけ

長期化する人生を充実させるために個人ができることは、大きく分けて三つあります。

第1に、心身の健康を保つこと。フィジカルだけでなく、メンタルの健康も大事にしないと、長い職業人生を前向きに歩むことができません。

第2に、新しいことに踏み出すマインドセットを持つこと。好奇心を刺激されたら、とりあえず手を伸ばしてみればいいのです。

第3に、新しいスキルを身につけること。

スキルは、新しいことに踏み出した結果、ついてくるものでもあります。「どうしたら新しいスキルを獲得できるのだろう」と悩むより前に、まずは新しいことにトライする。すると、うまくやるには何が必要かもわかるので、自然と勉強したり、吸収しようと努力したりするものです。

日本のビジネスパーソンは総じて優秀で、能力も高い。足りないのは、一歩を踏み出す勇気だけです。

人生100年時代には、50代でもようやく折り返し地点に辿り着いたばかり。先はまだまだ長いのです。ぜひ、皆さんも新しいことに取り組んで、自分の可能性を広げながら、人生の後半戦を存分に楽しんでください。

 

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