仕事(Work)と休暇(Vacation)を組み合わせた造語である「ワーケーション」。「リモートワーク等を活用し、普段の職場や居住地から離れ、リゾート地などで普段の仕事を継続しながら、その地域ならではの活動も行うこと」と一般的には定義される。
しかし、長田英知氏は、「休暇と仕事を混在させた時間を意識的に作り出すことで、創造力=クリエイティビティを引き出す一種の仕掛け」と定義する。いったいなぜ、ワーケーションがクリエイティビティを引き出すのだろうか?
※本稿は、長田英知著『ワーケーションの教科書』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
どこでも、いつでも働くことを可能にしたとき、オフィスワークと同等、あるいはそれ以上のパフォーマンスやクオリティを社員が発揮できるかは、企業にとって大きな懸念事項となります。
リモートワークのうち、企業が在宅ワークのみを認める場合、仮にオフィスでの作業よりも若干効率性が落ちたとしても、出勤率の抑制によりオフィスを縮小し、経費を削減できれば効率性とコストのトレードオフで評価することができます。
また、出社が必要なときには、必要に応じて会社に社員を呼び寄せることも可能でしょう。
一方、ワーケーションで社員が地方やリゾート地に勤務することを認める場合、労務管理や災害時の緊急対応に対するハードルが上がり、また心理的な距離も感じるなど、在宅ワークよりもマイナスの面が目立つようになります。
その結果、企業のワーケーション導入に関わる心理的ハードルを下げるためには、仕事のパフォーマンスやクオリティが目に見える形で向上したり、優秀な人材を確保しやすくなるといった明確な動機づけが必要になってきます。
社員にとっても状況は同じです。Work from Anywhere at Anytime の仕組みが勤務している会社で導入されたとしても、在宅ワークで十分と考え、仕事のクオリティや効率性が上がらない限り、あえてワーケーションを行う意義を見出せないと考える人も多いでしょう。
では、ワーケーションを行うことで仕事のクオリティや効率性を上げることはできないのでしょうか。
株式会社OWNDAYS(オンデーズ)の田中修治社長は、「アイデアの量は距離に比例する」ということをブログで以下のように述べています。
「人間は環境に支配される生き物だ。移動した距離に比例して、景色が変わる。人が変わる。食べ物が変わる。話す言葉が変わる。気温が変わる。文化や風習が変わる。常識が変わる。遠くに行けば行くほど全てが大きく変わるのだ。
そして元いた場所に戻ってくると、自分の今立っている場所では常識だから絶対に変えてはいけないと信じて疑わないでいたことが、意外と簡単に変えても大して問題のないことだと思えたりする。
そんな変化を沢山経験しているうちに、脳みそが刺激され活発になっていくから、自然とアイデアが湧いてくるのだろう。」
遠くの場所を訪れたとき、その土地の何気ない光景や空気感に刺激を受けて、視野が広がったり、新しいアイデアにつながるヒントを得る経験をしたことがある人は、多くいるのではないでしょうか。
日常生活においても新しい人に出会ったり、住んでいる街に新しいショップがオープンするなど様々な刺激があるはずなのに、移動を伴ったときの方が体験の鮮度が増し、新しいアイデアを誘発しやすいのはなぜなのでしょうか。
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「距離感」と「クリエイティビティ」には密接な関係がある >
更新:11月22日 00:05