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テレワークで変化した“人間関係”…会話で役立つ「質問の作法」

2021年04月09日 公開
2023年02月21日 更新

魚住りえ(フリーアナウンサー/ボイス・スピーチデザイナー)

魚住りえ

アナウンサーとして、多種多様な数多くの人たちの話を聞いてきた魚住りえ氏。その経験を通じて培ってきた、相手に好印象を持ってもらい、会話を弾ませて、人間関係を良好にする「質問」の仕方を教えてもらった。(取材・構成:内埜さくら)

※本稿は、『THE21』2021年4月号より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

テレワークの浸透で“質問力”がますます重要に

コロナ禍により、テレワークがニューノーマルとして定着しつつあります。私もオンラインで司会や講演をさせていただく機会が増えました。

コミュニケーションに関する研修もオンラインでさせていただくことがありますが、40~50代のビジネスパーソンには、このような悩みを吐露される方が多くいます。

「直接顔を合わせなくなってから、部下が何を考えているのか、ますますわからなくなりました。うまくコミュニケーションが取れているのか不安です……」

若い世代には、ウェブ会議のとき、映像をオフにして音声もミュートにする人が増えているとのこと。確かに、顔が見えず、声すら聞こえなければ、心許なくなるのは致し方ありません。

ですが、テレワークが増えた今こそ、「質問力」を高めるチャンスです。相手の話を聞き出せるか否かは、質問力次第。

時代は変わりました。一人で一方的に話し続ける人ではなく、オーディエンスに絶えず質問をして、会話を活性化できる人こそが、相手に好印象を持たれ、仕事の成果も上げられるようになったのです。

もちろん、対面でも、コミュニケーションを円滑にする質問力は役立ちます。磨いておいて損はありません。

 

池上彰氏の解説のポイントは質問にあった

質問力に優れている人には、次の三つの特徴があります。

一つ目は、対話型のコミュニケーションができること。

代表例が、ジャーナリストの池上彰さんです。理解するのが難しい世界情勢や政治経済について、わかりやすく説明してくださることで有名です。

難解な話題であるにもかかわらず、池上さんのお話が視聴者の心を離さないのは、適宜、ご自身の話をストップして、質問を挟み込んでいるからです。

聞き手であるゲストの表情や仕草を観察しながら、「◯◯さん、わかりますか?」「ここまで、皆さん、大丈夫でしょうか?」「何か質問はありませんか?」などと問いかけます。

「米国の新大統領は、世界にどのような影響を与えると思いますか?」など、視聴者に問いかける質問をすることもあります。

すると、ゲストや視聴者は、「どうなるんだろう」と考え込む。そして、池上さんの答えを心待ちにする。話を聞いている人の思考や感情を、決して置いてきぼりにはしないのです。

ビジネスシーンにおいては、会議やプレゼンテーションで使える方法ではないでしょうか。

池上さんの他に私が尊敬しているのは、とんねるずの石橋貴明さんです。

一例を挙げると、番組のゲストの芸人さんに、「なぜYouTubeを始めようと思ったの?」「そのとき、相方はなんて言ったの?」など、「自分が聞きたい質問」ではなく、「次の話題への架け橋となる質問」を、「短い言葉」で「頻繁に繰り返して掘り下げる」のです。

加えて、「へぇ~」「ほう~!」など、ポジティブなリアクションで場を盛り上げていて、ゲストが次第に心を開いていっている様子が手に取るようにわかりました。

石橋さんのすごさは、トークスキルのみに留まりません。相手が誰であろうと、話を聞くときは必ず身体を相手に向けるのです。そして、絶対に最後まで相手の話をさえぎらず、目線を合わせながら聞く。自分が相手と同じステージまで降りて、相手と同等の立場で話を聞いているということです。

石橋さんは自分で面白い話ができる方なのに、会話を独占しない。「引き算の美学」を徹底していらっしゃいます。

現在59歳の石橋さんの「対話型コミュニケーション」は、上司世代のビジネスパーソンにとって参考になるはずです。

 

相手の名前を呼ぶことで得られる“三つの効果”

二つ目の特徴は、質問をする際に、相手の名前を呼ぶことです。

一見、質問力と名前を呼ぶこととは無関係に感じられるかもしれませんが、相手の名前を呼びかけることは、とても重要です。たいていの人は自分の名前が好きで、程度の差こそあれ、自分の名前に愛着を持っているからです。

私が名前を呼びつつ質問をする重要性を痛感したのは、日本テレビに入社した新人時代でした。「ミスタープロ野球」などの愛称で日本の全国民から愛されている長嶋茂雄さんと初めてご対面させていただいたときのこと。ご挨拶はほんの一瞬で終わりましたが、1カ月後に再会させていただいたとき、長嶋さんがおっしゃったのです。

「魚住さん、元気にしている?」

野球選手はもちろん、球団関係者やマスコミ各社だけでも、毎日何百人と挨拶をする人がいるのに、一瞬しか会ったことのない新入社員の私の名前を覚えていてくださった。

このとき私は、名前を呼んでいただけることで三つの効果があると実感しました。

●相手を尊重しているという心理が伝わる
●相手に好印象や信頼感を与えられる
●自分を相手に強く覚えてもらえる

という効果です。

長嶋さんは、世間的には「フィーリングで生きている人」というイメージを持たれがちですが、名前を覚える努力を怠らない、ビジネスパーソンの鑑だと思ったエピソードです。

「どうせ名字は知っているのだから、わざわざ呼ぶ必要はない」と、なおざりにするのではなく、名前を呼ぶことを徹底してみてください。話しかけられた相手の承認欲求が満たされ、相手から自分へ対する質問も増えます。結果、コミュニケーションが活性化して、意見の齟齬を減らせます。

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