2021年03月24日 公開
2023年02月21日 更新
(写真撮影:長谷川博一)
経済危機、震災、そしてコロナ禍と相次ぐ危機の中、世界中で「リーダーの資質」が問われている。一方、なぜか日本では「強いリーダー」は「ワンマン」として忌み嫌われる傾向にある。
しかし、今後は日本でも「強いリーダー」が必須だと説くのは、ポストコロナのリーダー論『リーダーの「挫折力」』を上梓した冨山和彦氏だ。なぜ、世界では強いリーダーが求められ、日本は逆なのか。その理由を聞いた。
※本稿は、冨山和彦著『リーダーの「挫折力」』(PHP研究所)の内容を抜粋・編集したものです。
昨今、世界中でいわゆる「強いリーダー」への待望論が強い。ロシアのウラジーミル・プーチン、中国の習近平、イギリスのボリス・ジョンソンなどがその例であり、選挙には負けたが、アメリカのドナルド・トランプ前大統領はまさにそのシンボルのような存在だろう。
これはまさに、現在が「有事」であることの証明だ。「100年に一度の危機」が頻繁に発生し、破壊的イノベーションがあらゆる業界にて起こり、産業構造も社会構造も急激に変化する時代は、いわば社会的戦時とすらいえる。不安定あるいは不確実な時代に、人は強いリーダーを求めるのだ。
産業革命以降の世界の歴史を見ればわかる。工業化が急速に進んだことでどの国も状況が不安定となり、強いリーダーを求めるようになっていった。
一方、合議で決めていくような意思決定システムが通用しなくなっていく。世界で最も民主的といわれたワイマール共和国が崩壊し、後にヒトラー政権が誕生したのが、その象徴的な例だろう。
このような事例を挙げると、強いリーダーの出現に対して警戒心を持つ人も多いだろう。トップダウン型のリーダーシップについて「独断専行」「独裁者」などというレッテルを貼るのだ。そうでなくても、日本人にはいわゆる「強いリーダー」への警戒感が強いように感じられる。
もちろん、トップが腐敗や暴走をしないための仕組みを作っておくことは重要だ。だからこそ私は企業統治システムの制度改革と、自らも社外取締役としての実践に多くのエネルギーを使ってきた。
しかし、だからといって「トップダウン型のリーダーシップ」を否定するべきではない。強いリーダーシップを作り、ダメだったらクビにする仕組みこそがガバナンスの本質的な役割なのである。事実、現在うまくいっている国や企業の大半はトップダウン型だ。
更新:11月22日 00:05