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「センス」は才能だけではない…“論理的な努力”で直感を磨く方法

2021年03月05日 公開
2023年02月21日 更新

長田英知(良品計画執行役員)

 

「普通」の基準によって、訴求する対象も変わる

2つの基準についてもう少し理解を深めるために、ファッションを例にとって考えてみましょう。一般人の中でもファッションに興味のある人と、興味のない人では「普通」と考える基準点が異なります。

たとえば、仕事で着るスーツに関心がない人にとっては、1着2万~3万円の2プライススーツ(1万9000円と2万8000円など、2つの設定価格から選べるスーツ店の商品ライン)、少し年齢が上がってくると5万円前後のセレクトショップのスーツが「普通」の基準点となってくるのではないでしょうか。

しかし、スーツにこだわりを持っている人であれば、10万円以上のオーダースーツが「普通」の基準点となることを考えると、そこには価格とクオリティに対する考え方における大きなギャップがあります。

2プライススーツの場合、丈夫さや手入れのしやすさが、ある程度確保されているのであれば、生地やデザイン、着心地については妥協しなくてはならないケースも多いかもしれません。一方、10万円以上のオーダースーツの場合、生地や縫製、着心地に対する要求水準は当然ながら高くなります。

「平準点でいい」という人と、「合格点」を求めるマニアの人のどちらをターゲットとするかはビジネス戦略上、どちらもあるとは思いますが、この2つを混同して考えると、適切な戦略を描くことはできません。

一番理想なのは、品質を「合格点」レベルまで高めながら、価格や手に入れやすさは「平準点」のものとさほど変わらない製品やサービスを作り上げることでしょう。

ユニクロは、まさにその典型例と言えます。ベーシックなアイテムを同価格帯よりもワンランク、ツーランク上の素材を使って提供し、さらにはトップデザイナーにデザインを依頼することで、ただ単に最新の流行を低価格で提供する「ファストファッション」とは一線を画しています。

【著者紹介】長田英知(ながた・ひでとも)
東京大学法学部卒業。地方議員を経て、IBMビジネスコンサルティングサービス、PwC等で政府・自治体向けコンサルティングに従事。2016年、Airbnb Japanに入社。日本におけるホームシェア事業の立上げを担う。2022年4月、良品計画に入社。同年9月よりソーシャルグッド事業部担当執行役員に就任。社外役職として、グッドデザイン賞審査委員(2018~2021)、京都芸術大学客員教授(2019~)等。著書に『たいていのことは100日あれば、うまくいく』(PHP研究所)、『ワ―ケーションの教科書 創造性と生産性を最大化する「新しい働き方」』(KADOKAWA)などがある。

 

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