ノルマがつらくて逃げ出したい……そんな衝動にかられたことはないだろうか?
リクルートの元トップ営業マンで、現在は営業研修の人気講師として活躍する伊庭正康氏に、「ノルマのプレッシャーを軽減するコツ」と「それでも目標未達で終わってしまいそうな時に必ずやっておくべこと」を教えてもらった。
※本稿は、伊庭正康『できる営業は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
あなたは、営業ノルマがキツくて、夜にうなされたことはないでしょうか。私は新人の頃、あまりのプレッシャーから、金縛りになったことがありました。
夢の中でも飛び込み営業をし、寝汗でぐっしょりになりながらうなされていたこともあります。ノルマのプレッシャーは、常に襲ってきました。慣れないうちは、本当につらいものです。
実際、ノルマに苦しむ声は少なくありません。マイナビが調べた調査(2016年2月)を見ると明らかです。
Q:営業職はつらいですか? それとも楽しいですか?
つらい51・9% 楽しい48・1%
・ノルマが課せられる(40歳以上/小売店/男性)
・数字に追われている(40歳以上/食品・飲料/男性)
・厳しいノルマがある(40歳以上/金融・証券/男性)
確かに、営業の悩みのほとんどは「ノルマ」に起因するといっても過言ではないでしょう。「ノルマがなければ、そこまで無理しなくても」と思えることばかりでしょうし、ほとんどの悩みは解消できるのではないでしょうか。
とはいえ、ノルマの本質を理解できるようになると、おのずとノルマのプレッシャーはなくなるものです。こう考えてください。
営業ノルマは、ただの「ゲーム」。未達成でも、リスクは本人にはほとんどない、と。
これが本質。法的な解釈から考えると、そりゃそうなのです。考えてもみてください。
・ノルマが未達成でも、労働基準法があるのでクビにはならない。
・ノルマが未達成でも、上司は罵ののしることはできない(パワハラになるので)。
・ノルマが未達成でも、ペナルティを課すのは労働基準法で違法(評価は下がるが)。
そもそもよく考えてみると、企業と営業マンの間にあるのは、ノルマを完遂する契約ではありません。
フルコミッション(フルコミ)でなければ、ノルマ達成を前提とした請負契約ではなく、あくまで雇用契約。雇用される側は、ノルマの未達成が続こうとも、かなり守られているのが現状です。
芸人、歌手、スポーツ選手などと比べたら、天国のような契約ではないでしょうか。デメリットがあるとしたら、「その会社での居心地が悪くなる」という不安くらいでしょう。
私が、ノルマのプレッシャーから解放されたのは、ある支社長の言葉のおかげでした。
「そこまで、自分を追い込まなくていいよ。4回中3回、3回中2回、達成できれば、合格じゃないかな。むしろ、組織に影響力を発揮してくれるほうに期待したいな」
肩の荷が下りた瞬間でした。もし、ノルマがつらいと思っていたら、こう考えてください。
ノルマは、あくまで「ゲーム」。未達成でも、リスクはない、と。だからこそ、むしろ営業を楽しんだほうが正解、ということなのです。
ただそうは言っても、目標達成が見えなくなると、やる気が落ち、フットワークが悪くなってしまうもの。中には、「自分は営業に向いていないのでは」と思い始める人もいるでしょう。
こうした状況になってしまったとき、さらなる悪循環に陥ってしまわないために、やるべきことが2つあります。
【達成が“まったく”見えないときにやるべきこと】
(1)達成に固執せず、どこまでやり切るのかを自分で決める。
(2)次の仕込みをしておく。
この2つをしておけば、間違いありません。
「100%の達成は、どう考えても厳しい。でも90%の達成まではやり切る」
「今回のマイナス分を取り戻すほどの高い達成率を次の期間で実現すべく、同時に今から仕込みをしておこう」
と決め、あとは迷わずにやるべきことをやるのみです。ダメージを最小限に抑えることができ、なおかつ次の飛躍のチャンスも仕込んでいる、というわけです。
私も実は経験があります。新人の頃でした。目標達成が厳しくなったことがあります。その時にこうしました。
「新規開拓の目標は事業部で一番を目指そう。そうすることで達成率を90%台に乗せておく。そして次の期間で高い達成率を実現し、マイナス分を取り戻して帳尻を合わす」
つまり、そうやって年間または半期のトータルで達成しているという状況をつくることで、評価への影響がないように食い止めたことがありました。
一番良くないのが、どっちつかずのままに時間が過ぎるのを待ってしまうこと。目標を大きく外すだけでなく、次の期間の目標達成も厳しくなってしまいます。
やることを決め、迷わずに、あたかもオートマチックにやり切る日々の中で、やる気が落ちることはかなりの確率で防げます。
数字が厳しいとき、「なぜ、なぜ」と要因を分析することは大事です。
でも、もっと大事なのは、「いつ、どうなりたいか」、そんな理想の自分の姿を描けているかです。これがないと、ただ反省をするしかなくなってしまいます。
まずこうなりたいという「未来像」を鮮明に描いてみてください。鮮明にするほどに、未来像に牽引されやすくなります。
「いつ、誰に、どんな営業をし、どんな評判がたっているのか? そして、どのくらいの実績を上げているのか?」など、想像でいいので描いておくのです。
私も求人広告の営業をしていたときにやりました。
「企業から、伊庭にお願いすれば、必ず良い人が採用できるという評判ができ、ほとんど紹介だけで仕事が入り、さらに、お客様から勉強会の依頼が入る。業績は社内で全国1位になる」
最初は妄想のようなものでしたが、結果的にそうなりました。でも、そりゃそうです。そうなるために努力をするようになるからです。
反省は大事です。でも、もっと大事なのは、「自分の未来」を鮮明に描くことです。トップセールスになれるかどうかはスキル以上に、意志によります。
更新:11月22日 00:05