2021年03月09日 公開
2023年02月21日 更新
――フィールドインタビューは、クライアントインタビューよりも、さらに難易度が高い。
「クライアントの取引先へのインタビューなら、クライアントが場を設けてくれるので、比較的スムーズにできます。しかし、クライアントの競合企業へのインタビューだと、当然、警戒されます。相手には、こちらの質問に答える必要も義務もありません。得たい情報を引き出すのは至難の技です」
――遠藤氏は何度もそうした難所に分け入り、目的とする情報を聞き出してきた。
「警戒している人に話させることこそ、本物の質問力です。相手の閉じた心を開かせるには、技術と気力と、時にはちょっとした工夫も必要です。例えば、飛び込みのフィールドインタビューでは、手土産を用意します。
高価すぎるとかえって怪しまれるので、1000円程度のお菓子を持参し、最初に渡す。受け取ったら、相手も何かしら話さざるを得ないと感じるものです。ギブ&テイクのギブを、こちらから先にするわけですね。
とはいえ、あるプロジェクトでは、実に日本全国で100件以上の飛び込みインタビューを行ないましたが、半分以上は門前払いでした。それでも諦めずに、足を使って1次情報を集める。獲得するのに苦労を伴うからこそ、希少で貴重な情報となります。
『よくこれだけリアルな情報を集めたね。ここにすべてが凝縮されている!』と、クライアントに高く評価していただきました」
――質問の仕方も、ストレートなものでは、相手は答えてくれない。例えば、A社からの依頼で、競合であるB社の商品を扱う代理店に「どうしたらA社に鞍替えしてくれるか」を聞きたいときは、どうするか。
「私の場合は、まず、自分の著書を名刺代わりに手渡します。そして、コンサルタントとして市場調査をしているという体裁で、『今、どんな商品が売れているんですか?』というような質問から始めます。
雑談のような雰囲気で話して、空気が少し温まってきたら『見たところ、扱っているのはB社の商品だけなんですね』と一歩踏み込む。『A社のものはないんですね』だと不自然に感じられるかもしれませんから、『A社やC社のものはないんですね』と、別の競合企業の話もする。
そうして雑談のような会話を続けているうちに、ポロッと、『B社からのマージンはいくらで……』と、相手が話すことがよくあります。上の方針に従ってB社の商品を扱っているけれども、実はB社の商品に不満を持っている、という話が出てくることもあります。本音を引き出すスキルが必要ですね」
更新:11月22日 00:05