2021年02月09日 公開
2023年09月15日 更新
これまで仕事に邁進してきた50代ほど、人生を振り返る時間を作らなかったため、自分自身や家族のことなどを驚くほど知らない人が多いと、元東レ経営研究所社長の佐々木常夫氏は語る。
同氏も50代に差し掛かったころ、大きな挫折を体験。自身の生き方を振り返り、人生の転換期にはそれに見合った戦略があることに気付いた。仕事、コミュニケーション方法、家族との接し方…50代が考えるべきキャリア戦略とは何か。50代は、人生最大の転機と語る同氏に、50代からの人生の振り返り方と自然体で生きるコツをうかがった。
※本稿は、『THE21』2021年3月号より一部抜粋・編集したものです。
取材・構成:麻生泰子
――50代からは、人生後半戦に向けた健康維持、老後資金を含めた生涯設計プランも大事だが、さらに大切なのは「人間関係の整理」だという。50代以降、佐々木氏が変えたのは、人づきあいのルールだ。
「仕事の話は社内で完結するのが私のルール。飲み会で仕事の話を引きずることはしません。それと無駄な飲み会はできるだけ参加しない。二次会に至っては行く意味がないですね。顔を出さないといけない飲み会があるとすれば、3回に1回、5回に1回と減らしていく。1回集中型でいいんです。
一方で増えたのは、社外の仲間とのつきあいです。一つは、大学時代のワンダーフォーゲル部の仲間との集まり。一時はつき合いが途絶えていましたが、約20年ぶりに再会して以来、今でも年1回集まっています。
もう一つのつきあいは、40代のときに異業種交流で知り合った仲間。どちらも私が幹事を買って出ています。酒のつきあいはやめて、自分の心を満たす人間関係を優先させるべき。50代からは積極的に友情の手入れをしてほしいと思います」
――50代の挫折は、あらためて家族に向き合う転機にもなった。
「東レ経営研究所の社長になったことで、業務のコントロールがしやすくなり、長男や妻のことで何が起きても対応できるようになりました。何より後回しにしてしまっていた次男や長女にも向き合う時間が増えた。
仕事に追われていると、妻や子、親など身近な人ほど後回しにしがちですよね。そして肝心のことは照れくさくて伝えられない。だから、私は手紙を書くようにしたのです。普段伝えられない感謝や想いを綴る。手紙なら面と向かっては言えないことも不思議と書けるのです」
――今でも佐々木家では、成人した子との手紙のやりとりが、絆を深める大切な手段となっているという。
「50代はまだ仕事も忙しいかもしれませんが、時間の長短の問題じゃないんです。短い時間でもしっかり相手に向き合う。それだけで相手にはちゃんと伝わる。妻にいたっては“人生のパートナー”ですから、一番大事にしてほしいですね。
いくら健康でお金があっても、家族や仲間がいなければ寂しい人生ですよ。人とつながっていれば、楽しみもできるし、新たなチャンスも巡ってくる。人を大切にすることは、自分を大切にすることにつながるのです。50代からは、幸せを倍増させてくれる人間関係だけを優先していきましょう」
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更新:12月04日 00:05