2020年10月16日 公開
2024年08月29日 更新
役職定年や定年退職を迎えたあとも充実した人生を送るために必要なのは、「会社の仕事に代わる柱」を見つけることです。私のように会社とは別の仕事に取り組むのもいいし、趣味やボランティア、学び直し、地域の活動などでもいいでしょう。
ただし、会社の仕事がそれまでの人生で中核を占めていたわけですから、単に余暇を楽しむ程度のものでは、それに代えることはできません。よく「定年後は趣味三昧で過ごすよ」と言う人がいますが、しばらくは釣りやゴルフに夢中になったとしても、途中で止める人は少なくありません。
それは「仕事の合間にやるから気分転換やストレス解消になる」という類の趣味であって、仕事に代わるほどのやりがいや手応えは得られないからです。
自分の人生の中核になるものを新たに作るには、ある程度の時間がかかります。会社員から別の道へ転身した人への取材では「3年でひと区切り」と発言する人が多くいました。
蕎麦打ち職人に転じた人は「自信のある蕎麦を出せるようになったのは開業から3年後」、起業した人は「立ち上げた会社が落ち着くのに3年かかった」と話していました。
自分の立場を変えるには、それくらいの時間が必要だということです。1クール3年として、それを3回くらい経ている人は、お金になるかどうかは別として、自分なりの土俵を持っているというのが、私の実感です。
ですから、50歳から始めれば、60歳で定年を迎えるまでに、会社の仕事に代わるものを確立できます。「『定年後』は50歳から始まっている」と考えて動き出すべきです。
50歳よりも若い40代の人も、早めの準備を意識したほうがいいでしょう。高度成長期やバブル期を経験した私たちの世代までは、会社の仕事さえ頑張っていれば自己確認できたし、会社に依存した働き方がまだ許されていました。
しかし、もはや高度成長は期待できず、最近は業績が悪化していなくても、中高年を対象に早期退職を募集する企業が増えています。今後、定年がさらに引き上げられる見込みの中、早いうちに対応しておきたいのが企業の本音なのです。
しかも、今回のコロナ禍によってこの動きは加速すると思われます。自分の人生において会社中心の働き方が占める割合を低くすることが求められています。私が言うまでもなく、40代以下の人たちは「今の会社に依存したままではいけない」という危機感を感じているのではないでしょうか。
では「もう一人の自分」を見つけ、「会社の仕事に代わるもの」を作るにはどうすればいいのか。それには、いくつかのアプローチがあります。おそらく会社員にとって最もポピュラーなのは、今の仕事のやり方を見直し、社内だけでなく、市場で評価される働き方に切り替えることです。
例えば営業職なら、これまで会社のために数字を上げることだけを追求してきたけれども、顧客の課題を解決することを第一に考えてみる。技術職として自分のスキルや専門性を会社のためだけに使ってきたなら、それを会社の外で困っている人たちのために役立てられないかと考えてみる。
こうして視点を切り替え、仕事のやり方を変えながら、市場に評価される働き方を探してみてください。実際にこの方法で「もう一人の自分」を見つけた人の事例を、私も数多く見てきました。
リース会社の営業職だった男性は、営業先を訪問するたびに顧客企業が抱える経営課題を丁寧にヒアリングし、一緒に解決できるように努めたそうです。その経験を通して課題解決の能力を磨き、現在はコンサルタントとして独立して活躍中です。
元電機メーカーのエンジニアが専門技術を活かして新規事業を提案し、社内ベンチャーを起業して定年後も経営に携わっているケースや、会社員時代に海外事業を経験した人が、海外進出を検討する企業にアドバイスを行なっている事例もあります。
50歳前後になれば、30年近い会社勤めの経験があるのですから、市場に求められるだけのスキルが何かしら身についているはずです。
それを基にして、仕事に取り組む際の視点を「会社のため」から「社会の要請に応えるため」に切り替えれば、会社の外でも評価される仕事のやり方が見つかります。
その際にお勧めしたいのが、会社員として働きつつ、個人事業主になったつもりで仕事に取り組むことです。例えば、「A社の営業職」ではなく、会社の名前ナシでもやっていけるだけの能力やスキルを備えた営業職になることを目指す。
会社に雇われる立場ではなく、個人事業主として会社と対等の立場で契約できる力量を持つということです。もちろん、会社を辞める必要はありません。
こうして個人事業主としてやっていけるレベルになれば、それが「もう一人の自分」に直結します。50代のうちに土俵を固めれば、60代以降も活躍を続けられるでしょう。
更新:11月21日 00:05