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実体経済が悪化しても株価が上がる謎…「漠然と株を買う」が危険な時代に

2020年08月06日 公開

加谷珪一(経済評論家)

 

世界的優良企業は「生活者目線」で探せ

――先ほど、ミクロな視点が必要だとおっしゃいましたが、日本に住む我々には、海外企業の実態は掴みにくいと思います。どんな基準で海外優良企業を見つければいいのでしょう?

「超優良企業に視点を絞れば、そんなに難しくありません。アンテナを張っていると、日本でよく見る商品の中に、グローバルな超有名企業が展開しているものがたくさんあるからです。

例えば、生活用品の会社で見てみましょう。P&Gは皆さんご存じかと思います。日本企業の商品と一緒に陳列されるので、横並びだと思われがちですが、P&Gは世界的な優良企業です。

あまり難しく考える必要はありません。日本企業だって、よく知っているつもりになりますが、財務状況を正確に把握している人は少ないのですから。

むしろ、下手に投資理論を勉強するより、生活者の視点を磨いたほうがいいかもしれません。アマゾンの株価が急激に伸びたとき、マンションのゴミ捨て場にアマゾンの段ボール箱が増えていました。こういうところに目が行くと、実感として今伸びている企業がわかるはずです。

一度、生活者の目線で、身の回りの商品で世界的優良企業が手掛けているものはないか、おさらいしてみましょう」

 

「脱・オフィス論」でも、都心はやっぱり最強だ!

――その他の金融商品はいかがでしょうか。不動産では、都心から郊外に移る人が増えることで、都心の物件価格が下がるのではという声もあります。

「結論から申し上げると、そこまで地方回帰は進まないと考えています。理由は二つです。

一つは、テレワークができる労働者は、結局3割ほどだから。残りは現場作業に携わる人ですから、職住近接が望ましいはず。オフィス需要の低下も、一定範囲に留まるでしょう。

二つ目は、オフィス跡地に住居が立つと考えられるからです。 

どういうことかと言うと、一時的にオフィス需要が減ると、大手デベロッパーが、今よりも格下のビルからテナントを奪って、家賃を下げて貸し出します。

そして、中堅はより低いところから奪い取る。この玉突きによって最後に犠牲になるのは、築年が古く設備の良くない小さなビルです。そこにオフィス需要はありませんから、跡地にワンルームやDINKS向けのマンションが大量供給される可能性があり、そこに人が集まると考えられます。

その証拠に、不動産投資信託(RIET)は、一時下落したもののすぐ回復しました。戻りが早かったのは、ネット通販の増加から物流施設を持つRIETでしたが、次に上昇しているのはレジデンス系でした。ほとんどの物件は、都市部です。これが上がっているのは、今言ったような見通しがあるからではないでしょうか」

――今後の資産戦略は、このパンデミックに適応していく社会や企業の流れを読む視点が欠かせませんね。

「その通りです。お金を生み出す原資は企業活動です。ですから、資産を守るにせよ攻めて増やすにせよ、コロナ禍を乗り越える企業のポテンシャルを見出さなければならないのです。

コロナ禍では悲観論ばかりに目が行きがちですが、希望もたくさんあります。ぜひ、ご自身でその種を見つけてください」

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