2020年06月26日 公開
2023年02月21日 更新
「デジタル・イノベーション・ラボ」の室長・則武譲二氏(左)と、同ラボ所属のチーフデータサイエンティスト・小峰弘雅氏
「データを活用して業績を上げよう!」とは、どの企業でも言われることだろう。しかし、いざやろうとすると、どうしていいのかわからない。そんな企業も多いはずだ。いったい、何が問題なのか? 〔株〕ベイカレント・コンサルティングが社内のデジタルエキスパートを結集して立ち上げた「デジタル・イノベーション・ラボ」の室長・則武譲二氏と、同ラボ所属のチーフデータサイエンティスト・小峰弘雅氏に話を聞いた。
データの活用がうまくできない企業では、どんなことが起きているのか? まずは両氏に典型的なパターンを紹介してもらった。
【パターン1】
アパレル企業のA社では、IT部門のコスト削減とデータの処理速度向上のため、IT部門主導でデータ統合プロジェクトが始動した。購買情報(POSデータ)や会員情報、アプリのログ、ウェブサイトへのアクセスログを統合するもので、ゆくゆくは天気情報や顧客の趣味嗜好のデータも社外から購入して統合したいというものだ。
ところが、集めたいデータが多すぎるうえに、リアルタイムデータを追い求めすぎたため、なかなかデータ統合ができない。予定していたリリース日には間に合わず、プロジェクトは延長。コスト削減どころか、再投資が必要になってしまった。
それでも、1年かけて、ようやくデータ統合プロジェクトが完了。「これを使えば在庫管理がもっと効率的にできるようになる」と、意気揚々と在庫管理部門にデータを持って行ったのだが、在庫管理部門の関心事は、これから展開するキャンペーン。過去のデータは要らないと言われてしまう。
ならば、とマーケティング担当者に持っていくが、やはり反応は芳しくない。マーケティング担当者は、これまでもデータを統計学で分析して、どの商品をどんな顧客が購入しているのかなどを把握しており、IT部門がデータを統合したところで、やる仕事は同じだからだ――。
このパターンの問題点として、目的を決めずにプロジェクトをスタートさせていることと、IT部門とビジネスサイドとをつなぐデータサイエンティストがいないことを、小峰氏は指摘する。
「マーケティング担当者は『ある商品が20代の女性によく売れている』というようなことは分析できます。それを活かして、『20代の女性が来店したときは、この商品を勧めるといい』というように、店舗での接客を改善することができます。
一方、統合されたデータをデータサイエンティストが見れば、『埼玉県在住で池袋によく遊びに来る年収300万円台の20代女性がデート中に購入することが多い』といったように、より詳しい分析ができます。
ただし、より詳しい分析ができれば、より良い接客ができるかというと、必ずしもそうではありません。来店客に年収を聞いたりするわけにはいきませんから。
そこで、『店舗での接客を改善して売上げを上げる』というような目的を初めに決めて、現場をよく知っているビジネスサイドとともに、データサイエンティストがデータ分析をすることが必要なのです。
ビジネスサイドは『最先端のファッションを楽しみたい人に向けた商品展開をしたい』『広く流行している服を着たい人をターゲットにしたい』など、様々なマーケティングのアイデアを持っています。そのそれぞれを実現することを目的として、データサイエンティストが、ビジネスサイドと一緒になって、最適なデータ分析をすることが求められます」(小峰氏)
データサイエンティストと言うと、「そんな高度な人材はうちにはいない」と思ってしまうかもしれないが、博士号を取るような専門的なスキルが必要なわけではないという。
「もちろん、そういうデータサイエンティストもいますが、統計学を業務で使っているマーケティング担当者がもう少し深く統計学を勉強し、世の中に出回っている機械学習のツールを使えるようになれば、十分です。社外のデータサイエンティストに発注して分析をしてもらっている企業もありますが、社内でデータサイエンティストを育成している企業も多くあります」(則武氏)
更新:11月24日 00:05