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「日本がとるべき道は製造業の復権」スマートファクトリー事業を手がけるFAプロダクツ会長に聞く

2020年06月08日 公開
2023年02月21日 更新

天野眞也(FAプロダクツ会長)

天野眞也

 

かつて「モノづくり大国」と呼ばれた日本だが、労務費を下げるため、工場が次々と途上国に移転。製造業は花形の業種ではなくなり、工場で働きたいという日本人も少なくなった。それならば日本は別の業種で発展すればいい、という考え方もあるが、スマートファクトリー事業を手がけるFAプロダクツ会長の天野眞也氏は、日本の製造業は復活できると言う。

 

製造業の復権なくして、日本の復権はない

 日本はエネルギーや食料を自給できないので、外国から買わなければなりません。そのための外貨を、なんらかの産業で獲得する必要があります。

 皆さん、ご存じのように、その産業こそが製造業でした。白物家電からパソコン、テレビ、自動車など、工業製品で日本は圧倒的なシェアを誇ってきました。製造業によって、1968年にはGDPが世界第2位にまでなったのです。

 しかし、約40年後の2010年には、その地位を中国に譲りました。大手メーカーの白物家電ブランドは中国企業に買収され、日系メーカーが強かったパソコンも、今ではそのほとんどが海外メーカー製です。かつて世界市場を日系メーカーが寡占していたテレビも、今では世界シェア上位に入っている日系メーカーはごくわずか。工業製品のシェアが中国や韓国などに奪われたことで、日本の経済は停滞に陥ったわけです。もはや、30歳前後よりも若い人には、日本の製造業が強いというイメージはないのではないでしょうか。

 頼みの綱は自動車ですが、これからはEV(電気自動車)の時代に入ります。EVは、すごく簡単に言えば、モーターとコンピュータと電池を組み合わせたもの。この3つとも、中国が大きなシェアを持っています。完成車メーカーは、今まで培ったエンジンや足回りの技術だけではなく、これらの技術要素も視野に入れた新しい開発、生産、販売の体制構築が急務です。

 そうなると、日本はとても苦しくなる。金融や通信、ITなどの第3次産業も、誤解を恐れずに言うと、ほとんどは製造業を支えるためのものという見方さえできます。取引先の多くは日本のメーカーだからです。例えば、地銀がレストランに融資をしている場合でも、そのレストランのお客は地元の工場の従業員だったりするわけです。

 外貨を獲得するためには、観光業以外は、輸出するしかない。では、何を輸出するのか。農産物では、それほど多くの外貨は得られないでしょう。

 ですから、日本の復権は、その中心にある製造業の復権なくしてはあり得ない。私はそう考えています。

 

工場の仕事を「楽しい仕事」にしなければならない

 シェアを奪われたうえに、さらに日本の製造業の苦境に追い打ちをかけているのが、人手不足です。それとともに、製造業に人気がないことも深刻な問題です。地方の若者が工場で働きたいと思わなくなっているのです。戦後の日本では、農業をしている人が多かったので、屋内で働けるうえに1日3食きちんと食べられる工場での仕事は楽しかったでしょう。しかし今は、工場勤務は立ち仕事で、クリエイティブでもなく、大変な仕事だというイメージを抱かれています。実際は、そうではない工場も多いのですが……。

 日本の製造業の就業者数は、この20年で200万人以上も減っています。緩やかな変化なので、「茹でガエル」になってしまい、ピンと来ない人が多いのですが、このままではますます競争力を失っていきます。まだ間に合う、今のうちに、手を打たなければなりません。

 そこで求められているのが、工場の自動化・最適化です。

 人手不足の問題が解消されるのはもちろんですが、より重要なのは、工場で働く人が輝く、楽しくなる、ということ。重労働や、熱い場所、寒い場所での仕事など、労働環境が良くない仕事はロボットによる自動化を行ない、人はよりクリエイティブな仕事に集中できるからです。

 工場での仕事が楽しいものになれば、優秀な人材が入ってきて、その人材が新たな仕組みを生み出し、工場での仕事がさらに楽しくなる。この好循環を生むことが大切です。

 

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