2020年03月25日 公開
2020年03月25日 更新
ランサーズで実現したいのは、テクノロジーを活用することで、個性や才能を活かして、自分らしく働いている個人を増やすこと。そのためには、多種多様な仕事を、数多くの企業に掲載していただくことが必要です。
そこで力を入れているのが、信頼できるプラットフォームを作ることです。
ランサーが登録をする際には電話で本人確認をし、実名と顔写真の掲載を推奨しています。そして、企業がランサーを検索したときに、匿名・顔写真なしのランサーよりも優先的に表示される仕組みにしました。また、企業からの評価によってランサーのランクが上がる認定ランサー制度を導入しています。ランサーのスキルアップのためのセミナーも開催しています。
一方、報酬を支払わずに逃げたり、不当に安く発注したりする企業があると、ランサーが離れてしまいますから、「エスクローサービス」を導入して、発注時にいったん当社が企業から報酬を預かることにしています。
単価が安すぎる案件は、AIを使って検知し、表示されないようにもしています。
こうして、企業とランサーの双方が信頼できるプラットフォームを築くことで、単価の高い仕事やスキルの高いランサーが集まる好循環が生まれるようになりました。
最近は、会社でバリバリ働きながら副業で利用している人も増えています。
「ランサーズを使うことで、きちんと収入を得られるようになり、人生が変わった」と言われることも増えました。
月数百万円を稼いでいる人もいますし、ランサーのうち6割は地方に住んでいる方なのですが、「東京の単価の高い仕事ができるようになった」という声もよく聞きます。
「おかげで結婚を決意できた」と、わざわざ当社に来られて、結婚届にサインをほしいと言われたこともあります。結婚式に呼ばれて主賓挨拶をしたこともありました。
このように、ランサーのプライベートが前進したという声を聞けるのが一番嬉しいですね。
ランサーズ上で流通している仕事の総額は着実に伸びていますが、まだ1合目ぐらいだと思っています。日本のGDPと比べたら、微々たるものにすぎません。
ビジネスパーソンの副業を国が後押しし、副業を解禁する大手企業が相次いでいることは、当社にとって追い風です。しかし、「副業をやりたい」人は多くても、「実際にやっている」人はまだ少数。副業をしたいけれどもやっていない人たちのために、副業に取り組みやすい環境作りにも力を入れています。
2018年に始めたサービス「Freelance Basics」では請求書の発行や契約書のチェックなどのバックオフィス機能を提供しています。仕事自体に集中してもらうのが狙いです。
昨年は「新しい働き方LAB」を立ち上げました。これはランサー同士のコミュニティで、一人で仕事をしていると抱え込みやすい不安を解消するのが目的の一つ。全国15カ所に拠点を設置し、交流イベントやセミナーを催しています。
日本全体としてこういった働き方を浸透させるために、大手企業にも活用していただき、案件を増やしていきたいですし、既存のマッチングサービスもさらに改善していきたいと思っています。
上場したのは、業容拡大のための資金調達が第1の理由です。
また、ランサーズは、今やランサーにとってなくなると困るインフラになりつつありますから、上場することによってガバナンスを強化し、事業の継続性を高めたいという考えもあります。
大きな視点で見れば、当社の事業は日本全体の生産性アップにつながるはずです。当社は小さな存在ですが、少しでもそれに寄与していきたいと考えています。
《取材・構成:杉山直隆 写真撮影:まるやゆういち》
《『THE21』2020年3月号より》
更新:11月23日 00:05