2020年01月22日 公開
2023年07月12日 更新
会が始まると、木村氏が言うファシリテーションの特色がよくわかった。
木村氏が最初に促したのは、『モンスター組織』というタイトルから抱くイメージを3点、大きめの付箋に書くこと。それぞれが記入し、二人ひと組で互いに説明する。この段階で、多様な価値観を共有する雰囲気が一気に醸成された。
次いで、各自がこの会の目標を設定し、自己紹介もかねて発表する。
それから本の内容に入るのだが、全体の概要をつかむために与えられた時間はわずか1分。本に取り上げられている中で、興味のあるケースの部分を読む時間も8分だけ。あえて短く区切ることで、集中力を高める意図が感じられる。
対照的に、読んだ部分について他の参加者に説明したり、ダイアローグをしたりする時間はリラックスムード。感想を誰が最初に述べるかを決める際、「小指の一番長い人から!」という木村氏の呼びかけに笑いが起こる。語る人も聞く人も、終始和やかだ。
こうして1時間が早々と過ぎ、後半は権田氏の講演だ。コンサルティングの豊富な経験に基づく知見が、明快に語られる。
組織の停滞に「戦犯」はいないこと。対立や批判の善悪二元論は間違いであること。そもそも組織は変化を不可欠とするものであり、揺らぎや不一致は当然の現象であること。そうしたメッセージにうなずく人あり、メモを取る人あり。サテライト会場やオンラインでの参加者からも、いくつもの質問が寄せられた。
終了後も権田氏に話しかける人が尽きない中、参加者の一人に会の感想を聞いた。
研修会社でマネージャーを務める男性は、今回が初参加。コンサルティング業務も行なっており、『モンスター組織』の内容に興味を抱いたという。
「企業の問題は構造的なものなのだと学べて、とても有意義でした。今後は、対立点ではなく、接点や共通項にフォーカスして仕事をしたいと考えています。読書会の手法そのものも面白かったですね。自分で読書会を開催する際には役立てたいと思います」
具体的なアクションに結びつく学びを得られたことは、まさにこの読書会の目的通りだ。
木村氏は、小さなものでもまったくかまわないので、アクションを起こすことが大切だと強調する。
「帰りがけに、会で取り上げた本と同じ著者の別の本を買う、といったささやかなことでも、行動は行動です。これを私たちは『小さな一歩』と呼んでいます。小さくとも、踏み出すことなしには、決してゴールにつながりません」(木村氏)
ゴールが見つからないまま終わってもいい、とも話す。
「そうした方々にも何かの課題はあるわけです。それをポジティブに捉えよう、と呼びかけています。課題は、目的があるからこそ生じるものです。『何かをしたい』『こうなればいい』という理想や希望があるから、課題がある。それを意識していれば、いずれ行動の糸口をつかめます」(木村氏)
更新:12月04日 00:05