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W杯優勝の名監督に学ぶ 「世界最強のメンタル」の作り方

2020年01月09日 公開
2023年01月30日 更新

佐々木則夫(元サッカー日本女子代表監督)

徹底的な準備を象徴するキャプテン・澤のひと言

こうしてなでしこジャパンは、あの11年ワールドカップを迎えた。ところが決勝で対戦したアメリカは、それまでの対戦成績が0勝21敗3分と、日本が一度も勝ったことのない相手。気持ちが萎縮してもおかしくない場面だが、このときも佐々木氏は選手たちに自信を持たせるための手を打っていた。

「実はワールドカップの前に、アメリカと親善試合をしましてね。結果は2戦2敗でしたが、我々はあることに気づいた。アメリカは点を取った直後にトーンダウンし、動きが鈍るクセがあったのです。

だからすでに準備段階で、『先制点を取られるかもしれないが、アメリカは力を抜くから、そのときこそ点を取るチャンスだ』という意識を選手たちと共有できていたし、全員が『先制されてもひるむ必要はない』とわかっていました」

実際に決勝戦では、アメリカに1点を先制された。その瞬間、キャプテンの澤穂希選手は、他の選手たちに「さあ、行こう!」と声をかけている。

「これはつまり、『点を取られたときが、点を取るチャンスだよ』と皆にメッセージを送ったわけです。

だから選手たちの心は折れなかったし、自信を持ち続けられた。そして日本は点を取り返し、引き分けのままPK戦まで持ち込むことができました。

これでわかるように、強いメンタルは『良い準備』から作られます。私たちは親善試合の他にも、世界の強豪を想定して男子チームと試合をしたり、成功したプレーを録画して繰り返し見せたりと、選手に自信をつけるための準備をしてきました。

その過程があるから、澤選手の『さあ、行こう!』というシンプルな言葉が、『わかってるよね、私たちは勝てるんだよ』と皆を鼓舞するメッセージになった。その場の思いつきだけで、選手たちをモチベートできるような魔法の言葉なんてないんですよ」

 

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著者紹介

佐々木則夫(ささきのりお)

サッカー日本女子代表監督

1958年生まれ。明治大学卒業後、NTT関東サッカー部でプレー。2007年12月より現職。08年の北京五輪四位、10年アジア大会優勝。11年女子W杯(ドイツ)にてFIFA主催大会で男女を通じ、日本を初優勝に導く。国民栄誉賞を受賞し、12年のロンドン五輪では史上初の銀メダルを獲得。

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