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疲れにくい身体を作る! 医学的に正しい 「サウナの入り方」

2019年11月29日 公開
2023年02月24日 更新

早坂信哉(温泉療法専門医)

ビジネスパーソンの間でサウナが大人気だ。多くの人は適度な楽しみ方をしているが、中には身体に負担をかける無茶な入り方をしているサウナー(サウナ愛好家)も見受けられる。そう指摘するのは、温泉療法専門医の早坂信哉氏だ。これからもサウナを安全に楽しむために、身体に負担をかけないサウナの入り方をマスターしよう。(取材構成・野牧峻

 

「ととのう」サウナは実は危ない!?

――最近、サウナが大ブームですね。事故などでブームが収束しないよう、安全な入り方をして欲しいとのことですが、身体に負担をかけるNGなサウナの入り方とはなんでしょう?

【早坂】一つは、極端な温度差を楽しむ入り方です。

人間は熱い身体を急激に冷やすと、血管が収縮して一気に血圧が上がり、徐々に血圧が下がるよう設計されています。寒暖差が激しいほど、その落差も激しくなる。つまり、血管に負担をかけるわけです。

サウナーは、90℃以上の熱々のサウナに入ったあと、「シングル」と呼ばれる10℃以下の水風呂で火照った身体を冷ますと聞きます。血圧が50~60は上がるのではないでしょうか。激しい温度差は、不整脈(心拍が減る)、狭心症や心筋梗塞を引き起こすリスクがあります。

――熱々のサウナと極寒の水風呂を交互に入ることで、ふわふわした頭が徐々にハッキリし、リフレッシュする……。この「ととのう」という状態が快感だと聞いたのですが、その辺はいかがでしょうか。

【早坂】血圧低下や心拍数減少で脳の血液と酸素が不足すると失神に近い状態になります。その状態から目を覚ますのと、「ととのう」は紙一重なような気がします。

また、「ととのう」に関する研究結果がないので、はっきりと断言できませんが、極端な温度差から身体を守るため、つまり痛みを和らげるために、脳内物質が分泌されているのではないかと考えられます。ランナーズハイと同じで、幸せホルモン「オキシトシン」や快楽物質「βエンドルフィン」などが分泌されているのではないでしょうか。

――というと、「ととのう」ことで独特の恍惚感が得られるというのは、つまり……。

【早坂】断言はできませんが、身体への負荷が大きいのであまりお勧めはできません。サウナに慣れ親しんでいる人ならまだしも、シニアや初心者は最初から寒暖差の激しい入り方をするのはやめましょう。

 

「マイルドな温冷交代浴」で副交感神経をメインに

――他に、危険なサウナの入り方はありますか。

【早坂】よく見受けられるのは、「勝手に我慢大会」ですね。赤の他人と張り合うなどして、長くサウナに入ったとしても何もメリットはありません。サウナ内の12分計を見ながら、「あの針が1を差すまでは……」と考えている人もいるかもしれませんが。どちらにせよ、熱中症や脱水症状のリスクを高めます。

あと、せっかく温泉施設に来たのだから、長めに入らないともったいないとかね。かえって、湯疲れする原因になります。

――では、正しいサウナの入り方とはなんでしょうか。

【早坂】「競い合わない」「欲張らない」を前提に、身体に負担をかけない入り方をすることです。

目安は、「汗が出てきたな」と感じるくらいで出てしまうことです。+1度は体温が上がっているので十分効果は出ています。

入るなら、高温のサウナよりも温度が低いミストサウナや低温サウナがお勧めです。一般的なサウナは90~100℃ほどで5分程度ですが、80℃以下なら体調を見ながら10分ほど入っても大丈夫でしょう。

ちなみに、低温サウナがない場合はなるべく下段に座ると熱くありません。温かい空気は上に行くので。

――あまり寒暖差をつけなければいいということでしょうか。

【早坂】そうです。水風呂ではなく、25~30度のぬるま湯に入ったり、シャワーを浴びるだけで十分です。外気浴もマイルドに身体を冷やせるのでお勧めです。

先ほど、極端な寒暖差は危ないと指摘しましたが、ほどほどであればむしろ奨励したいところです。なぜなら、交感神経をほんの少し刺激すれば、かえって副交感神経の働きが強まるからです。これを利用した「温冷交代浴」という療法もあります。

ただし、主役はあくまで副交感神経であることを忘れてはいけません。仕事で緊張して交感神経が優位に働きがちなビジネスパーソンなら、なおさらでしょう。疲労回復を目的としてサウナを活用するはずですから。

なお、私の研究ではサウナだけでなく、岩盤浴の温浴効果でも不安軽減効果が確認されました。サウナに行きづらいと感じる方は、こちらから始めてもいいかもしれませんね。

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著者紹介

早坂信哉(はやさか・しんや)

温泉療法専門医 医学博士

1968年生まれ。宮城県出身。自治医科大学大学院医学研究科修了。浜松医科大学准教授、大東文化大学教授などを経て、現在、東京都市大学人間科学部教授。(一財)日本健康開発財団温泉医科学研究所所長。生活習慣としての入浴を医学的に研究する第一人者。著書『最高の入浴法  お風呂研究20年、3万人を調査した医師が考案』(大和書房)。

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