2019年09月07日 公開
2022年10月25日 更新
――社内起業制度で手を挙げて、ビジネスモデルを他の人に話した時、周囲の反応はどうでしたか?
大森 初めはオンラインで写真を共有する家族SNSのようなサービスを考えていました。今はスマホ間で簡単に写真を送り合うことができますが、当時は通信料をかけてメールで送るしかなくて、それも容量オーバーで届かなかったりしたんです。ところが、人に話すと、ボロクソに言われましたね(笑)。
――批判されて、フォトブックのビジネスに変えたのですね。
大森 写真で困っていることは何か、色々な人に聞いて回った結果、冒頭でお話ししたように、「写真をプリントしていない」という隠れたニーズを見つけることができたからです。
社内起業制度への応募は30件くらいあったと思いますが、審査を通ったのは、私たちを含めて2件でした。
――審査に通ると、チームメンバーを用意してくれるのですか?
大森 メンバー集めから自分でやれということで、社内のエンジニア2人とデザイナー1人に声をかけて、4人でプランを出したんです。審査に通ると、この起案メンバーがイノベーションセンターに異動になって、事業を始めました。
――「ノハナ」という名前の由来は、なんなのでしょう?
大森 ハワイ語で「家族」や「家族の絆」を意味するohanaという言葉の頭にnをつけました。nは、家族の新しいコミュニケーションを作っていきたいという意味や、会社の中でmixiの次のサービスを作るという意味を込めて、nextのnです。また、mixiの頭文字mの次の文字でもあります。
とはいえ、初めからこの名前にしようと思っていたわけではなく、実際には100くらいの案を挙げて、言葉の響きが良いかや商標の問題をクリアしているかなどを確認して、最終的に決めたのですが(笑)。
――これからの展開については、どういうことを考えていますか?
大森 フォトブックと年賀状だけでは天井が見えてきたので、新しいチャレンジをしないといけないな、と考えています。特に年賀状は市場が縮小していて、その中でもネットやスマホで年賀状を作るという市場は伸びてはいるものの、長期的には危機感を持っています。
フォトブックについては、子供以外にも、ペットやブライダルにも使えると思います。「家族」という枠がブレない範囲で、活用シーンを増やしていきたいと考えています。
「ノハナ」のアプリは小さい子供がいるお母さん向けに最適化していますから、姉妹アプリを作る形になるでしょう。例えばペットなら、じっとしてくれませんから、動画で撮影すれば、その中から良い写真を切り出してくれる、というような機能があるといいかもしれません。
50歳以上のお客様も2割弱いるので、そうした方の旅行や登山を記録するサービスもあり得ると思います。ただ、「家族」という枠から外れるので、優先順位は低くなりますね。
また、200万ファミリーにアプローチできるという顧客基盤ができているので、それを活用して、写真とはまったく関係のないサービスも自社で開発したいと思っています。私は、家族のコミュニケーションを豊かにしたり、家族の想いを形に残したり、子供の創造力を育てたりすることに興味があるので、そのための事業です。フォトブックは、あくまでその中の手段の1つだと思っています。
今年の6月28日から10月14日には、期間限定で、ららぽーと立川立飛店(東京都立川市)に店舗を出しています。ワークショップで家族との思い出を作り、写真撮影もできる店舗です。これも、思い出を写真に残すだけではなく、思い出を作るという試みです。
――MBOによって、会社に変化は生じていますか?
大森 より公のものになったという意識が、私の中にあります。MBOの資金は私だけで用意できたわけではなくて、複数のベンチャーキャピタルや事業会社に入ってもらっていますから。ベンチャーキャピタルが入るということは、上場を目指すということ。そのための社内体制の整備も進めています。早ければ来年の12月には上場しているつもりです。
より独立心を持たないといけないと思いますし、周りの方にしっかりと支えていただけるようにもしないといけない。視線がより外に向くようになりましたね。他社との業務提携なども積極的に考えています。
《人物写真撮影:まるやゆういち》
更新:11月26日 00:05