2019年08月02日 公開
2023年01月30日 更新
IDEO Tokyo シニアディレクター・野々村健一氏
7月29日(月)、東京大学本郷キャンパス(東京都文京区)にて、「Adobe Education Forum 2019」が開催された。テーマは「創造的問題解決能力を育むSTEAM教育」。基調講演をIDEO Tokyo シニアディレクターの野々村健一氏が行なった。
基調講演に先立って登壇したアドビ システムズ〔株〕マーケティング本部バイスプレジデント・秋田夏実氏は、これまで人間がしていた仕事をAIなどの機械がするようになる中で、人間にしかできない創造的問題解決は、今後、ますます重要なスキルになると話した。
続いて、同本部 教育市場部部長の小池晴子氏が、STEAM教育について説明した。
教育界で注目されているSTEM教育(Science〈科学〉・Technology〈技術〉・Engineering〈工学〉・Mathematics〈数学〉の総称)に「Art」を加えたものがSTEAM教育だが、小池氏によると、このArtは「芸術」ではなく、「幅広い基礎教養(Liberal Arts)」のこと。STEAM教育は文理横断の幅広い知識教養教育で、課題解決のための新しい価値を育成し、人間ならではの創造性を発揮することにつながるという。そして、創造性の発揮のためには、Creative Confidenceも欠かせないと話した。
それを受けて行なわれた野々村氏の基調講演のタイトルは「Creative Confidence ~創造性に対する自信を育むこととは」だ。
野々村氏は、今はVUCA(Volatility〈変動性〉・Uncertainty〈不確実性〉・Complexity〈複雑性〉・Ambiguity〈曖昧性〉)の時代であり、特に「不確実性」が増していることがビジネスの課題になっているとしたうえで、「未来を予測する最良の方法は未来を創ることだ」という言葉を示し、だからこそ、今、クリエイティビティやイノベーションが注目されていると説明した。
そして、アドビ システムズが2016年に、米国、英国、ドイツ、フランス、日本の18歳以上、約5,000人を対象に行なった調査の結果、世界で最もクリエイティブな国は日本という回答が34%、最もクリエイティブな都市は東京という回答が26%で、ともに最多だったにもかかわらず、自らがクリエイティブであるという回答は日本が最も少なかったことを紹介。日本人は「自分はクリエイティブではない」というマインドセットを、どこかの段階でしてしまっているのではないかと指摘した。
Creative Confidenceを解放するコツとして、野々村氏が挙げたのは3つ。
1つ目は「主観を大切に」だ。「5年後に世の中の人たちは何を欲しているだろうか」と客観的に考えるのではなく、「私たちがどうすれば、5年後に、世の中の○○を□□に変えることができるだろうか」と問いかけることが重要だという。
2つ目は「『やらない理由』よりも『やる理由』」。リスクを考慮するなどして「やらない理由」ばかりを言う組織だと、若手がせっかく斬新なアイデアを思いついても、「わかってもらえないから言わない」ということになってしまう。
3つ目は「実験上手になる」。小さく、安く、早く(速く)、多く、プロトタイプを作れる組織が、これから生き残っていけると話した。
基本的なマインドセットは「許可を請うのではなく、許しを請う」。まずはアイデアを実行して、あとで許しを請うくらいの姿勢が必要だという。
更新:11月22日 00:05