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急成長中の漫画アプリ『ピッコマ』が目指す「紙とデジタルが共存する生態系」

2019年05月27日 公開
2023年03月02日 更新

『THE21』編集部

 

紙の単行本のプロモーションもピッコマのデータをもとに実施

 

 最後になりますが、第3話「一蓮托生の生態系」です。

 ピッコマは作品を中心に考えているので、去年4月、5月、6月、また8月に、作品を中心にしたテレビCMを展開しました。

 また、「私たちは電子書店なので紙の売上げが落ちても関係ないよ」という考え方ではなくて、先ほどの調査データに表れているように、共存することによってより成長できると思っているので、紙の単行本の共同プロモーションにも、去年、チャレンジしました。

 一つの例として、『君になれ』(高野苺)という作品の1巻目の単行本が、去年、発売される予定がありまして、その3カ月前に、この作品はどんな方たちがターゲットになるかということを、ピッコマの中で検証してみました。

 

 

 まず私たちが限定した人だけが見られるバナーを作り、その人たちがバナーをクリックして、どんなふうに作品を読むかを、同じ作家先生の既存の作品を読んだことがある人、ない人や男女などに分けて分析しました。

 

 

 その結果、1話、2話を読んだところでの離脱が多いけれども、3話まで読んだ人は必ず4話を読むということがわかりました。この結果に合わせて、紙の本を売るときも、3話まで必ず読んでいただきたいというプロモーションの計画を立てました。

 同時に、ピッコマの中にはアンケート機能もあるので、電子で漫画を読んでいる人たちに、(紙の)単行本を買うかというアンケートも行ないました。

 これらすべてのデータをもとにして、私たちはメインターゲットを女性の高校生・大学生に絞りました。

 そして、メインターゲットと出会うことの多い原宿駅での広告を実施し、皆さんの手元にも実際のものを差し上げているんですけれども、3話までを収録した小冊子を、新宿、渋谷、表参道、池袋の街頭で2万セット配布しました。

 

 

 トーハンさんの協力をいただき、書店での展開も同時にやって、(小冊子)3万セットを皆さんに届けることもしました。話を聞いてみると雑誌コーナーと漫画コーナーは担当の方が違うんですけれども、私たちの考えでは、私たちのターゲットの人たちが一番行く場所はどこかといえば、女性向けの雑誌コーナーなので、トーハンさんの協力をいただいて、初めて雑誌コーナーでの漫画のプロモーションを実現させました。

 これから進化するピッコマの話を、もう少ししたいと思います。

 ちょうど先月、ピッコマはアプリをアップデートして、一番上のところに「マンガ」と「ノベル」というタグができました。漫画もノベルも、全体のホーム(画面)から開けることができます。

 

 

「話読み」と「巻読み」も、1つの画面にまとめています。話から読んでハマった人が巻を買う行動が見られています。

 原作としてノベルがある漫画には、ボタンが出て、押すと自動的に原作のノベルのページに行くようになっています。ノベル側にも同じくボタンがあって、原作のノベルを読んで面白いと思った人は、すぐに漫画に行けます。

『ピッコマTV』も同じように連動しています。ピッコマTVは、Netflixみたいなプラットフォームになりたいということよりも、原作があって、それがドラマやアニメーションになったものに関して、それらの作品をつなげる役割を考えています。

 例えば、『弱虫ペダル』(渡辺航)(の漫画)を、今、楽しんで読んでいる人は、『弱虫ペダル』のアニメーションも楽しむ可能性がより高くなるんじゃないかなということで、ボタンが(『弱虫ペダル』の漫画のページに)あります。このボタンを押すと、ピッコマTVの『弱虫ペダル』のアニメーションのところに飛びます。同じく、アニメーションのところでボタンを押すと、その原作の漫画にすぐにつながります。

『アヤメくんののんびり肉食日誌』(町麻衣)をピッコマで露出してみたところ、今日、ピッコマTVに入ると、その映画化作品がランキング1位になっているのは、その動向が表れている良い例だと思います。

 

 

 私たちは、まだピッコマの中に広告を入れていません。プラットフォームとしては珍しいと思います。毎日使っているユーザーの比率が高いので、広告業界で言うインプレッションが非常に高いプラットフォームで、とても悩むポイントではあります。

 最近、Googleさんと協力して、いろんなプラットフォームと一緒に分析していただいたことがあったのですが、シミュレーションをしてみたところ、他のアプリと同様に広告を入れた場合、月2億円の収益が出るということでした。

 1年で24億円というのは非常に大きな金額なのですが、広告を入れると、そのメインになるのはゲームです。私は、ゲームの業界とは何かを取り合うのではなく、一緒に生態系を作っていくものだと思っていますが、漫画が大好きで読んでいる読者に向けて広告を出して、「同じ可処分時間を使ってゲームをしてみませんか」と言うのは大きな矛盾かなと思って、いまだに広告を入れていません。

 私たちがつなげていくのは、同じ作品の原作(のノベル)から漫画、漫画から映像というところで、将来的にやりたいと思っているのは、あるアニメーションができるというときに、ピッコマTVにその予告編だけを上げる。それだけでも十分役に立つものになると思っています。今、ある漫画にハマっている100万人に、そのアニメーションができるんだということを知らせる導線ができるのは、非常に高いマーケティング効果があると思います。

 実際にそのアニメーションが観られる場所がテレビならテレビ、劇場なら劇場、他のプラットフォームならそのプラットフォームにつなげていくということも、生態系全体にとって良い循環だと思っています。

 

 

 そして、漫画の読まれ方についても研究をしています。

 漫画アプリで作品を読むと、だいたい、1ページずつしか見られません。(見開きのページが読みにくいのですが)ピッコマでは右上にボタンがあって、拡張してつなげて見ることができます。

 漫画の読み方として、まだ紙媒体とスマートフォンには少し違いがありますが、作家さんが表現したかったことをよりうまく見せるために、ピッコマは版面漫画の読み方をより追求するため、ビューワーとしてもいろんな機能を持っています。

 ピッコマの考え方、生態系を、次はグローバルまで持って行きたいと考えています。

 

 

 このグラフはiOSブックカテゴリーの国別の売上げを出したものです。世界では2年間で203%という成長をしています。その中で日本は277%の成長をしています。

 これはブックカテゴリーなので漫画以外も入っていますが、一時期は、中国の成長率が日本を超えたこともありました。

 日本は世界全体の42%のシェアを占めているんですけれども、面白いことに、去年の3月、4月から、非常に伸び率が高くなっています。漫画村の影響もあるかもしれませんが。

 

 

 私たちが考えているカカオグループのコンテンツビジネスの戦略を、最後に紹介します。

 カカオグループは韓国で、去年、芸能事務所をグループに入れることができました。韓国の場合は、ドラマを作るとき、俳優や女優が中心になって、そこに良い脚本家、また良いスタジオがついてくるというところがあるので、4つの芸能事務所をカカオグループの中に入れることによって、これからドラマ制作をより強くやっていく予定です。

 では、ピッコマはどういう役割をするのか。私は、アニメーションは、日本で作ったほうが必ずクオリティが高いものになると思っています。ドラマは、韓国の制作の能力が高くなっていることがあり、また、(韓国からは)そのドラマを中国まで持って行けるので、日中韓をつなぐことができます。

 ピッコマは原作を発掘して、それを、アニメーションにするなら日本で、ドラマ化するなら韓国のKakaoMと協力してやっていきたいと思っています。

 

 

 今日、この場では詳細まで紹介できないのですが、ピッコマではさらにグローバル化に向けた準備をしています。

 だいたい1時間くらい(お話ししたの)ですが、今日のキーワードをまとめると、共存とこれからの進化のお話をできたのではないかと思います。

 

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