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急成長中の漫画アプリ『ピッコマ』が目指す「紙とデジタルが共存する生態系」

2019年05月27日 公開
2023年03月02日 更新

『THE21』編集部

 

データだけに基づくレコメンドでは読者に飽きられてしまう

 

 次はピッコマのAI技術、レコメンド機能に関して説明します。AIの説明だけで2時間以上しても足りないくらいの量なので、今日は簡単にだけお話しします。

 ピッコマのレコメンドAI技術は、2つの機能を持っています。個人化レコメンドと関連レコメンドです。

 ピッコマは(個人化)レコメンドのために何を分析しているかというと、一部のトラフィック、10%の読者のみに、様々な作品を露出し、その10%のユーザーから閲覧転換率(のデータ)を得ています。最初から全体に見せない理由は、トラフィックがムダになるからです。10%の人のみで検証して、その中で一番閲覧転換率が高かったものを、残りの90%の読者にお勧めするというロジックになっています。

 

 

 ただ、当たり前ですが、作品の閲覧転換率はユーザーの好みによって違います。ピッコマで今もずっと非常に人気のある作品の例ですが、『復讐の毒鼓』(Meen原作/Baekdoo作画)の場合は、30代のアクションジャンルが好きな人では25%という非常に高い閲覧転換率が出ますが、恋愛ジャンルが好きな女性では2.1%しかクリック率が出ないんです。幅広いジャンルが好きな男性では、7.1%という平均値くらいの閲覧転換率が出ます。

 

 

 このように、ユーザーによって違う好みを持っているのですが、デイリーユーザー200万人に、今持っている作品の全体数6,700を掛けるとものすごい数になるので、私たちはユーザーを8つのクラスタに分けています。それに6,700作品を掛けた5万3,600という数を(対象に)私たちは分析をしています。

 

 

 長くなるので(省略しますが)、結論として、個人化レコメンドは、ユーザーを群に分けて、(専門的な)用語になってしまいますが、そこに私たちのMABを適用しています。

 今日は省略しますが、関連レコメンド機能は、逆に、読者ではなく作品を、先ほどお見せした表紙などのイメージや説明の文章をAIで分析することで類似群のマップを作って、ユーザーのデータと掛け合わせをしながら、レコメンドしています。

 

 

 このように、ピッコマでは2年間、AIの専門チームを稼働しながら、最先端の技術を開発し、使っているのですが、その素晴らしい研究結果も、プラットフォーム全体の60~70%だけに適用しています。なぜなら、すべてをデータに依存すると、偏った作品ばかり読むリスクがあるからです。

 今日、参加していただいている方のリストを見ると、競合の方たちもいるのですが、ここでピッコマの重要な機能を紹介したいと思います。それは、T.S機能です。

 

 

 AIという言葉は、皆さん、よく知っていると思いますが、T.Sとはなんでしょうか。

 まず、T.S機能が何をしているかといえば、例えば、今、スクウェア・エニックスさんの『賭ケグルイ』(河本ほむら原作/尚村透作画)という作品が映像化されていて、いろんなテレビ番組で宣伝されています。私が覚えているのは、3週間前だと記憶していますが、『王様のブランチ』(TBS系)という番組でも映像作品のプロモーションの話をたくさんしていて、それから5分以内に、ピッコマのスロットの一番上に『賭ケグルイ』が露出されました。

 また、ある作品は、ドラマ化されて月曜日に放送されていて、その時間帯にスロットが変わったりする。これもT.S機能の一つの例です。

 特に、深夜帯や週末には、T.S機能の中でも、K.T.S機能というものが稼働します。

 ……T.Sというのは、「手作業」です。K.T.Sというのは、「金(キム)の手作業」です。もうちょっと笑っていただけるといいんですけど(笑)。

 なぜこの話をしたかというと、すべてをデータだけ、技術だけに頼らずに、アナログとデジタルを融合しながら運営するほうが、より人々にいろんな作品を届けられると思っているからです。私はよく作品を味にたとえるのですが、今、多くの人たちが甘いものが好きだとして、甘いものばかり与えると、いつかは飽きると思います。甘いものが好きなら、しょっぱい味も、苦い味も、いろんな味を組み合わせる。様々な多様性を持った作品を届けることが、より作品を楽しめることになると思うので、私たちはT.Sを30%から40%、稼働させています。

(作品の)共同制作・連載ノウハウに関しても簡単に紹介します。

 私たちは、ピッコマというプラットフォームの中には編集部を持たないという考えを、今まで維持してきました。理由は、作品を作る側とプラットフォームを運営する側は分離したほうが、より幅広く作品を広げられるという考え方です。

 代わりに、私たちは出版社の方たちと共同で作品を制作することをしてきました。最初は1つの出版社から始まって、最近は、2社、3社、5社、10社と、どんどんと増えています。

 

 

 赤い線が閲覧者数で、青い線が売上げの状況なんですけれども、毎週連載に合わせて読者をそこに入れていき、ハマらせるということを、いろんな仕組みでやっています。これが私たちの持っているノウハウの一つだと思っています。

 一番直近で連載を始めているのが(スクリーンの)皆さんから見て左上のもので、(スクリーンの右下は)連載を3年間くらいやっているところでのグラフです。連載を始めてから休載時期があって、また再開しても読者を戻すノウハウを実験してきました。

 

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