2019年05月15日 公開
2023年07月12日 更新
単身者向け物件の需要がつねに一定数見込めるにもかかわらず、さまざまな要因から供給数が少なく、空き物件不足の京都。社会情勢の変化にも左右されない、京都の不動産価値を維持するものとは何か?第3回は京都ならではの物件のブランド力を解明する。
八尾 浩之
大手不動産会社に10年以上勤務し多種多様な不動産関連商品の開発販売を手掛ける。1992年に日本ホールディングス(株)の設立に参加。2011年に代表取締役に就任。2018年から近畿中高層不動産協会の理事を拝命。顧客最重要の姿勢を貫き、京都の不動産投資会社をけん引している。
連載の第1回、第2回を通じて、京都の単身者用物件の需要の多さについて解説してきました。今回は、ではなぜそれだけのニーズがありながら、供給数が増えないのか、その理由を解説していきたいと思います。
京都に新たな物件が増えない理由を「そりゃあ土地が少ないからしょうがない」で済ませていては、理屈が通りません。東京だって同じです。大規模開発するには海を埋め立てるほかないほど、東京には土地がありませんし、「持ってる人が手放さないから」というのも同じです。
ではなぜ、同じような状況の京都は、東京以上に物件の供給数が足りないのか。そこには京都市の「新景観政策」と言われる、様々な規制が大きく関わっています。
まず京都市内は中心部でも、平安時代の道が残っており、6メートル以下の道幅の狭い道路が多く、そのため容積率の制限が非常に厳しくなっています。また高さ制限も厳しく、京都市全体では最高でも31メートル(約10階建て)以下、図の白線の内側の地域、つまりもっとも住宅需要が見込まれる、生活利便性の高い地域では15メートル(約5階建て)以下の建物しか建設できないという厳しい規制となっています。
さらには京都の夏の風物詩、五山の送り火などが、京都市内に38箇所ある「視点場」から見えなくなるような高さの建物はダメという「眺望規制」、それぞれの場所に応じて街並みと調和するデザインでなければダメという「デザイン規制」、屋上看板の禁止や屋外看板の色・大きさを規制した「屋外広告物規制」など、京都ならではルールも多く、建築業者を悩ませています。このため、新築マンション建設のターゲットになるような商業地域でも、そもそも超高層ビルやタワーマンションを建てることが出来ないというだけでなく、物件の建築コストも増えるという現状が京都には存在しているのです。
しかしそうした厳しい規制のおかげで、京都はこれだけの需要がありながら乱開発を免れ、京都らしい魅力を維持し続けています。それが結果的に、京都の物件を、将来にわたり希少性が高い超優良物件とし、その価値を高めてくれて、結果的に高い収益をもたらすだけでなく、それを保有しているオーナーに50年後、100年後を見据えた「伝統と文化の保護者」というステイタスさえも与えてくれるのです。
とはいえ、すべての京都の物件= 投資先として有望ではありません。これまで解説した以上に「京都ならではの不動産投資の難しさ」もあります。まだまだ面白い話もありますが、誌面ではスペースの都合上限られた話しか出来ませんので、ご興味があればぜひ拙著をお読みいただくか、セミナーにお越しいただければ幸いです。
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更新:11月21日 00:05