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日本人の9割は「生産性」を勘違いしている

2019年03月06日 公開
2023年03月10日 更新

河野英太郎(日本アイ・ビー・エム部長)

 

目的に対して、合理的かどうかを考える

 では、どうすれば、成果あたりの投入時間を減らせるでしょうか。

 

 そのためには、一つひとつの仕事が目的に対して合理的かどうかを考えること。

 そして、非合理的な仕事を極限まで排除することが大切です。

 

 普段、当たり前のようにやっていることも、外部の目を通して見たり、冷静に考えてみたりすると、実際には非合理的なことをたくさんしているものです。

 

 私は今までのキャリアのなかで、多くの会社・組織に所属してきました。また、仕事のやり方も、お客様先に常駐することが多かったので、多種多様な組織を見ています。

 そのなかで見てきた「非合理的な仕事」の例は、枚挙にいとまがありません。

 

 たとえば、どこの部署にもあるのが、前任者から引き継がれてきた必要性の低い仕事

 何の疑いもなく続けているが、今ではもうやる意義がなかったり、最小限の労力で済むようなことはたくさんあるものです。

 

まず「なくしたい仕事」を挙げてみる

 目的と照らし合わせて、非合理的な仕事を見つけるためには、まず「なくしたい仕事」をリスト化することから始めるのをおすすめします。

 実現できるかどうかはともかく、「この仕事がなくせたら良いのに」という仕事を、常日頃からピックアップして、リスト化しておくのです。

 

 特に管理部門は仕事が増えがち。私も管理部門にいたときは、大胆な「なくしたい仕事リスト」をつくって、パソコンのデスクトップに保存していました。

 人は、新しいことは気軽に始めても、今までやっていたことをやめるのは意外と苦手

 このような仕事のリストをつくると、日頃から、仕事一つひとつに対して、「やらずに済ませられないか?」「将来的にはなくせないか?」という意識を持てるようになります。

 

サクサク話が進む「ある一言」とは?

 もちろん、ただ、やみくもに仕事をなくせば良いかというと、そうではありません。

 仕事をなくしてみたら、思わぬところで影響が出てトラブルになることもあります。

 

 そういったことを回避するためには、「これ、なくしてみたらどうなると思う?」と人に話してみると良いでしょう。

 

 そうすると、「実は昔、なくそうとしたんだけど……」と、思いもよらない「なくせなかった理由」が出てくるかもしれません。

 

 その場合は、本当になくすべきかどうか、具体的に話し合えば良いでしょう。

 その反対に、「考えてもみなかったよ、早速なくしてみようか」と、そのひと言がきっかけで話が進み出すことも、十分にあり得る話です。

 

 このように、きっかけさえあれば、人は案外簡単にやめることができます。むしろ、恐れるべきは、きっかけを失くして、延々とやる必要のない仕事を続けてしまうこと。

 こうした事態を回避するためにも、まずはひと言、気づきを誰かに話してみるようにしましょう。そうすれば、ただ漫然と続けるだけの日々よりも、長期的に見れば良い結果になるでしょう。

 

 なくしたい仕事に気づくことが、生産性を上げるための第一歩なのです。

著者紹介

河野英太郎(こうの・えいたろう)

日本アイ・ビー・エム部長/Eight Arrows代表取締役/グロービス経営大学院客員准教授

1973年、岐阜県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学水泳部主将。グロービス経営大学院修了(MBA)。〔株〕電通、アンダーセンコンサルティング〔株〕(現・アクセンチュア〔株〕)などを経て、日本アイ・ビー・エム〔株〕にて、コンサルティングサービス、人事部門、専務補佐、若手育成部門リーダー、サービス営業などを歴任。2017年に〔株〕Eight Arrowsを起業し、代表取締役に就任。著書に、ベストセラーとなった『99%の人がしていない たった1%の仕事のコツ』『99%の人がしていない たった1%のリーダーのコツ』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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