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日本人の9割は「生産性」を勘違いしている

2019年03月06日 公開
2023年03月10日 更新

河野英太郎(日本アイ・ビー・エム部長)

「非合理的な仕事」を職場からなくすコツとは?

 現代社会は、「VUCA(ブーカ)時代」と呼ばれている。VUCAとは、「あらゆるものを取り巻く環境が複雑性を増し、将来の予測が困難な状態」を指す言葉で、近年ビジネスシーンでも話題になっているキーワードの1つだ。
 今回は、そんな先の見えない時代に生き残るための仕事術をまとめた
『本当は大切なのに誰も教えてくれない VUCA時代の仕事のキホン』を上梓した河野英太郎氏に、「限られた時間で成果を出す」ためのスキルについて、解説していただいた。

 

生産性の向上には「2種類ある」

 前回の記事でお話ししたように、私たち現代のビジネスパーソンは、「VUCAの時代」=明確な答えがない環境に置かれています。

 VUCAが仕事に与える影響の最たるものは、「ビジネスサイクルの短縮」です。

 

 かつてのように、長い時間をかけて優れた成果を出そうとしても、その間に「優れた成果」の定義が変わることすらある時代になってしまいました。その結果、どの企業も短い時間で優れた成果を出すために、「生産性を上げろ!」と一様に叫んでいます。

 

 しかし、重要なのは、ここで求められている生産性向上の解釈です。

「生産性」を、投入した時間分の成果、と定義すると、その向上には、次の2種類の解釈ができます。

 

1.分子を増やす(時間を固定して、より多くの成果を上げる)
  例:一定の時間をかけて10の成果だったものを、12の成果に上げる
2.分母を減らす(成果を固定して、より少ない時間で達成する)
  例:一定の成果を出すのに10時間かかっていたものを、8時間で達成する

 

 

 この2つの解釈は、結論は同じでも、我々の心理面に与える影響は大きく違います。

 実は、1の考え方では、生産性の向上につながりにくいのです。

 

 多くのビジネスパーソンは毎日必死に働いています。その状況にさらにムチ打つように、成果を何十%上げろ、と言っても、モチベーションは上がりません。結果的に残業や社員のストレスにつながるのがオチです。

 

 一方、生産性の高い職場やビジネスパーソンは、必ず2の考え方で働いています。

 同じ作業を終えるのに、どうすればより早く済ませられるか、を考えるわけです。シンプルに考えて、このほうがよりモチベーションも湧くというものです。

 幸いにも、それまでより短い時間で成果が達成できれば、余った時間をプラスアルファに回すことができます。

 その結果、同じ時間でより高い成果を出すことも、自然と可能になります。

 

 ですから、まず皆さんに知っていただきたいのは、「ある成果を今までよりも短い時間で達成する」ための工夫が、生産性の向上につながるという事実です。

 

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目的に対して、合理的かどうかを考える >

著者紹介

河野英太郎(こうの・えいたろう)

日本アイ・ビー・エム部長/Eight Arrows代表取締役/グロービス経営大学院客員准教授

1973年、岐阜県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学水泳部主将。グロービス経営大学院修了(MBA)。〔株〕電通、アンダーセンコンサルティング〔株〕(現・アクセンチュア〔株〕)などを経て、日本アイ・ビー・エム〔株〕にて、コンサルティングサービス、人事部門、専務補佐、若手育成部門リーダー、サービス営業などを歴任。2017年に〔株〕Eight Arrowsを起業し、代表取締役に就任。著書に、ベストセラーとなった『99%の人がしていない たった1%の仕事のコツ』『99%の人がしていない たった1%のリーダーのコツ』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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