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会議の生産性は「事前議事録」で決まる

2019年03月12日 公開
2023年03月10日 更新

髙橋恭介(株式会社あしたのチーム会長)

 

脚本は情報の量と質で決まる

 これは、何も会議に限ったことではありません。たとえば、商談でも、お客様について深く理解し、今、何を自分たちに求めているのかを精緻に想定できていれば、商談で自分が話すセリフや相手のセリフまで入った脚本を書くことができます。

 そして、このような脚本が書くことができれば、商談全体をコントロールすることが可能になります。

 では、質の高い脚本を書くには、何をすれば良いのでしょうか。

 答えは、事前準備の量と質に尽きます。お客様を知るために、ウェブサイトをザッと見るのと、商談に直接は関係のないその企業の沿革や採用情報にいたるまで隅から隅まで読むのとでは、相手を知る「深さ」が違ってきます。新規で訪問する企業のことを深く理解するために、社史を取り寄せて事前に読む、という営業マンもいます。

 こうして事前準備の量を増やせば、自ずと質も高まってきます。たとえば、これまでアポイントがまったくとれなかった社長が、「30分だけ」という条件で会ってくれたとき、その企業についてどれだけ知っているかが会話に必ず現れ、それは相手の社長にも間違いなく伝わります。

 現在の経営状況はもちろん、相手の社長の性格や最近の心境などの情報も手に入れておけば、いくつかのパターンの脚本を事前に書くことができるでしょう。

 そして、「これは、一生に一度しかないチャンスなんだ」という緊張感をもって商談に臨めば、自分の顔つきや目つき、テンションなども普通のときとは違ったものになり、事前に書いた脚本を臨機応変に活用して、商談全体をコントロールすることができます。

 会議においても、冒頭で「あれ、今日は何の会議だったっけ?」などとチームリーダーが言おうものならば、メンバーはどうでもいい会議なのだと思い、緊張感のない、やる意味のない会議になってしまいます。

 逆に、チームリーダーが、「これは、一生に一度しかないチャンスなんだ」と思って事前準備に真剣に取り組めば、質の高い会議を行うことが可能なのです。

 

「色がつくまでイメージする」

 では、どの程度の事前準備をすれば、質の高い脚本を書くことができるのでしょうか。

 私は、「色がつくまでイメージする」ことを心がけてきました。

 たとえば、初めて行く企業の場合、1時間弱かけて念入りに情報収集を行います。まず、その企業のウェブサイトを全ページ見ます。経営理念や業績、経営トップの言葉などは覚えるように読み込みます。社長のフェイスブックがある場合は、それも読みます。

 それ以外にも、その企業の企業名で検索をかけ、気になったページには目を通します。これは特別なことではありません。

 実際、当社を訪問してくださる人の中にも同じようなことをして来られる人はたくさんいます。ある営業担当者は、あしたのチームのホームページを見て、私のフェイスブックを読み、私がブルーのスーツに赤いネクタイを常に締めていることを知り、次のように言いました。

「今日は赤いネクタイではないのですね。私は今日、髙橋社長とお会いできるので同じ赤いネクタイを締めてきました。そして、その話題から始めるイメージでこの場に臨んできました」

 相手企業のコーポレートカラーやウェブサイト、パンフレットで大事なポイントで使われている色などを見ておくと、一度も行ったこともないのに、相手がつくるプレゼンテーション資料のベース色を想像することができますし、社長が好む色やその企業で働く人たちの服装のカラーが華やかなのか地味なのかや、ときにオフィスの壁や家具の色合いまでも想像することができます。

 

事前に書いた脚本が会議後の議事録になる

 話をチームリーダーが行う会議に戻すと、多くの人は、議事録は会議の結果をあとから書くものだと思っています。それはその通りなのですが、ただ、チームリーダーが事前準備を万全に行い、会議の結論をイメージできて事前に脚本が書けているなら、その脚本がそのまま議事録になるはずです。

 たとえば、営業で今後どの販促方法に最も力を入れるかを決定する会議であれば、チームリーダーは次のようなことを考えることができるはずです。

・主要な販促方法は、A、B、Cの三つだから、それ以外の方法が議論されることはない
・Aを得意としているXさんはこの方法を推すだろう
・それに対して、Aが不得意なYさんは反対意見を述べ、Bを主張しそうだ
・Cが得意なのは、Zさんだが、何も言いそうにない
・XさんとYさんの議論の結果は予想が難しいが、XさんもBのやり方が不得意なわけではないし、Yさんは最近調子がいいのでBで合意するほうが得策かもしれない
・会議の結論としてはBになる

 簡単に言えば、こうした議論の流れが事前に読めれば、進行役の自分がどのタイミングで何を言えばいいのかを含めて、チームリーダーが考えた流れに沿った脚本を書くことができます。

 メンバー一人ひとりのセリフまでは書けないにしても、誰がどんな意見を言いそうかは、チームリーダーである以上、イメージできなくてはなりません。

 もし、自分のイメージと違う意見を言うメンバーがいるとしたら、そのメンバーの理解がまだ足りていないということでもあります。

 商談であれば相手がありますので、すべてをコントロールすることは難しい側面がありますが、社内の会議、自分たちのチームの会議であれば、チームリーダーが90%コントロールすることも不可能ではないでしょう。

 つまり、事前に書いた脚本の90%は議事録になるということです。

著者紹介

髙橋恭介(たかはし・きょうすけ)

〔株〕あしたのチーム 代表取締役会長/一般社団法人 スマートワーク推進機構 代表理事

1974年、千葉県松戸市生まれ。興銀リース〔株〕を経て、2002年に創業間もないベンチャー企業だったプリモ・ジャパン〔株〕に入社。副社長として人事業務に携わり、社員数十名だった同社を500人規模にまで成長させ、ブライダルジュエリー業界シェア1位に飛躍させた。同社での経験を生かし、2008年、〔株〕あしたのチームを設立、代表取締役社長に就任。現在、国内47全都道府県に営業拠点、台湾・シンガポール・上海・香港に現地法人を設立するまでに事業を拡大。約2,000社の中小・ベンチャー企業に対して、人事評価制度の構築・クラウド型運用支援サービスを提供している。

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