2019年01月18日 公開
2023年07月03日 更新
ここまでの話を聞いた人は、「10年後にはピークアウトしつつある中国より、東南アジアやインドに目を向けるべき」と考えるかもしれない。だが、特にウルトラマン世代の経営者やビジネスパーソンは、ここから先の話をよく聞いてほしい。
今から、特に注目すべきなのは、インドや東南アジアだけじゃない。日本、中国、韓国、北朝鮮、台湾によって構成される北東アジア地域だ。
一時期、「北朝鮮はアメリカからいつ攻撃されてもおかしくない」と世論で騒がれていたこともあったが、最近の北朝鮮はアメリカや韓国との融和路線に方向転換している。もしも南北が統一の方向に本格的に動き出せば、日本にとっても大きな可能性が開く。「北東アジア経済圏」がいよいよ形になり始めるからだ。
今まで北朝鮮は、北東アジアの経済発展を押し止めるような、いわばノドにささった魚の骨のような存在だった。この骨が抜けた途端、隣国に、7500万人市場が生まれることになる。そうなると、たとえ政治的問題は未解決のままでも、経済交流は盛んになっていく。
極端な例を想像すると、北朝鮮の喜び組がライブ配信のSHOWROOMで大人気に。秋元康氏プロデュースのもと、2025年の大阪万博で初公演を行って、アジアの大人気アイドルに─ーそんな笑い話としか思われないことも、現実になっていくかもしれない。
こうしたエンターテインメント分野における交流から、次第に民間交流が盛んになり、経済活動が広がっていくという流れは止められないだろう。なぜなら、北朝鮮は、さまざまな社会的な問題を抱えているからだ。
要介護の高齢者の発生、医師や介護スタッフの不足、地方の過疎化、貧困世帯の増加……。これらの問題は、自国内だけで解決できるものではない。そんな統一コリアに向けての問題をどう解決するのか。その解決策を持っているのが、そう、日本のビジネスパーソンだ。
高齢化先進国である日本は、介護や医療、過疎、貧困などの社会問題においても先進国だといえる。これらの問題を解決するために、すでにさまざまな企業やNPOなどが活動しており、多様なノウハウが蓄積され、経験を積んだ人材が育ってきている。
今挙げたような社会問題は、中国や台湾などにも存在する。特に、中国は一人っ子政策の結果、高齢化が急速に訪れるので、ここにもまた大きなニーズが生じる。それまでに日本のビジネスパーソンはビジネスモデルを磨き、体験知を蓄積していけば、北東アジアだけではなく、アジア全域から求められるようになるだろう。
あと数年もすれば、クラウド会議サービスやスマートフォンにも、会話の自動翻訳機能が搭載されるだろうから、言語の壁、国境の壁は完全になくなる。
また2025年に開催が決まった大阪万博も、北東アジア経済圏の礎を築くことになる。もともとダイバーシティの文化を自然に持っている大阪で万博が開催されることは、日本人がアジア人であることを意識し、その成長力を取り込む素晴らしいきっかけだ。
日本から海外に出なくても、アジアの成長に参画できる時代が間近に迫ってきているのである。
そして、そんな時代に活躍できるのは、これまで現場でさまざまな経験を経てきた、45歳以上のビジネスパーソンなのである。
(神田昌典著『インパクトカンパニー』(PHP研究所)より)
(写真撮影:永井 浩)
更新:11月22日 00:05