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「いきなり!ステーキ」を急成長させた経営者は、いかに困難を乗り越えてきたのか?

2019年01月03日 公開

一瀬邦夫(ペッパーフードサービス社長)

 

必死に考えて決めた道はどれを選んでも正解だ

 困難を前にすると、「もうダメかもしれない」「失敗したらどうしよう」とネガティブに考えがちだが、「ネガティブな状況だからこそ、ポジティブに考えることが大事」と一瀬氏。これは難しいことのように思えるかもしれないが、見方を変えれば、それほど難しいことではないという。

「人生には分岐点があります。危機的状況でなくても、どの会社に就職するのか、結婚するのかしないのか、事業を始めるのかどうするのか、なども分岐点です。

 どんなに難しい状況でも、これらの分岐点で必死に考えて出した答えなら、どの道を進んでも正解だと、私は思います。失敗を恐れる必要はありません。

 私自身、目の前のことを必死に考え、決断して、一つずつ乗り越えてきた結果、今の自分があるからです」

 不安やプレッシャーを感じても、「少しでもやろうと思ったのなら、やったほうがいい」と一瀬氏。なぜなら、やってみて初めてわかることがあるからだ。

「私が色々な機会でお伝えしているのは、『山に登れば景色が変わる。山の向こうが見えてくる』という言葉です。やる前は先が見えず、不安かもしれませんが、やれば必ず次が見えてきます」

 前に進むための精神力は、「それをやることに価値を見出す」ことでみなぎってくるという。

「私にとっての価値とは何か。それは、従業員のため、会社のため、世の中のために働く『喜び』です。

 私は昔から勝負事が好きでしたが、弱かった。勝負事が弱い人は、社長になっても大成しないのでは、と思ったこともあります。でも、よく考えてみれば、勝負事と商売は違います。

 勝負事には勝ち負けがありますが、商売では、自分も相手も両方が勝てるのです。お客様と『利利関係』を築いて、両方が喜ぶことができたら最高だと思い、それを実現しようと考えています」

『いきなり!ステーキ』のビジネスモデルも、「お客様を勝たせて、自分たちも勝つ」という考え方が根底にある。

「高級ステーキをたくさんの方に腹一杯食べてもらいたいという想いから、高品質の肉を普通の半額で提供しています。そのため、肉だけだと原価率が70%以上にもなります。サラダやアルコールなども楽しんでもらうことで、全体の原価率を50%台にしているのです。

 原価をかけることで、お客様が満足されて、店は常にお客様で一杯の状態。利益が出ているのは、お客様を勝たせ、喜んでいただいたご褒美です」

 

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著者紹介

一瀬邦夫(いちのせ・くにお)

〔株〕ペッパーフードサービス代表取締役社長CEO

1942年、静岡県生まれ。高校卒業と同時にコックの修業に入る。70年、『キッチンくに』を開業。85年、〔有〕くに(現・〔株〕ペッパーフードサービス)を設立し、代表取締役に就任。94年、『ペッパーランチ』の展開を開始。06年、東証マザーズに上場。13年、『いきなり!ステーキ』の展開を開始。14年、米国子会社設立。17年5月に東証二部、同8月に東証一部に市場変更。18年、米ナスダックに上場。

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