2018年06月01日 公開
2023年05月17日 更新
会話には毎回、特定の目的があります。そして、どんな目的にもその上位目的があります。
それを踏まえた上で、会話の目的はその都度異なったとしても、共通しているのは「変化を起こす」ことです。会話をすることによって、それ以前の状態から、なんらかの「変化を起こす」――多くの場合は、「望ましい変化を起こす」ことが目的となります。
変化を起こすということは、変化前と変化後の状態があるはずです。
この「状態の変化」は、次の5つの要素に大別することができます。
<1 感情の変化>
会話を通じて感情に変化が及びます。お客様のクレームに対して、誠実に対応し、丁寧な説明をすることによって、怒りの感情が鎮静化するということもあるでしょう。逆に、失礼なことを言ってしまって、お客様を怒らせてしまうこともあります。
誰にも言えない悩みを抱えた人が初めてカウンセラーに心の内を語れたとき、重荷を下ろせたような解放感を持つことがあります。
逆に、人格を否定されるような叱り方をされれば、怒りの感情がわき起こるでしょうし、誰かの裏切りを聞かされて悲しくなることもあるでしょう。
会話を通じて、相手や自分に感情の変化を起こす。これが目的の1つです。
〈2 思考の変化〉
会話は情報のやり取りでもあります。情報が追加されたり訂正されたりすることによって、私たちの思考は変化します。
Aという製品が故障したので、カスタマーサービスセンターに電話をかけたお客様がいたとしましょう。そのお客様は製品Aを欠陥製品だと非難します。
サービスセンターの担当者は製品の利用状況を確認し、本来の製品の耐久性と品質の基準と品質管理体制について説明し、今回の場合、お客様側の使用方法に間違いがあったことを丁寧に説明しました。
そのお客様は、たしかにその製品Aを別の用途に使おうとしていたことを勘案すると、自分に非があるということを理解します。故障は不本意であるものの、自分の責任であるため仕方ないと理解したとするならば、「製品Aは欠陥商品である」という思い込みは修正されたことになります。
この場合、思考の内容が変化したということができるでしょう。会話は情報のやり取りであるという側面があり、この点において、思考の変化も会話の目的の1つに数えられるのです。
〈3 行動の変化〉
会話によって思考が変化すれば、判断も行動も変化します。
現実を動かすためには、行動を変化させなければなりません。あらゆる会話は、少なくとも結果的に、相手の行動を変化させます。その変化が本意のものなのか、不本意であるかの違いはあってもです。ほとんどのビジネス・ミーティングは、行動の変化を目的としています。
どんなによいアイデアも、実際に試してみないと現実は変わりません。思考を現実に変えるための唯一の方法が、行動なのです。
現実を変化させたいと思うならば、会話の力点をお互いの行動の変化に置かなければなりません。
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更新:11月22日 00:05