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世代別 転職に成功する人、失敗する人

2018年07月02日 公開
2023年03月14日 更新

細井智彦

35~44歳(ミドル世代)

転職市場ではプレイングマネジャーや課長職経験者として「30代後半」と「40代前半」がミドル世代とされることが多いという。まだまだ現場の仕事にも期待されるミドル世代の転職事情とは。

成功体験を話しても見向きもされない!?

さまざまな経験を積んで、脂が乗っているこの世代。採用面接のときも、過去の成功体験を前面に押し出してアピールしようとする人を多く見かけます。

しかし、華々しい成功体験を話しても、面接官から評価されないことは少なくありません。そういう人は、相手がどんな人材を求めているのかを考えていないことが多いからです。

たとえば、前の会社で年間何十億円もの営業実績を挙げていたとしても、相手先企業がコールセンターのスタッフを束ねるマネジャーを求めていたとしたら、その成功談はまったく響きません。当たり前と思うでしょうが、こんなことにも気づかない人はたくさんいます。

面接官から評価されたいならば、相手企業のニーズに合わせて、「自分がどれだけ役に立てるか」を客観的に説明することが大切です。成功体験を話すにしても、そのニーズに応えられることを証明できる体験に絞って話しましょう。

相手企業のニーズを把握するには、自分で企業研究をして、「こんな人材を求めているのでは」と仮説を立てる必要があります。面倒に思えるかもしれませんが、それぐらいはやらないと、35歳以上の世代は転職で成功できないと心得ましょう。

 

職務経歴書を書けば活かせる強みが見つかる

相手のニーズに沿って売り込む戦略を立てるときには、「自分には何が足りないのか」も考えて、言語化しましょう。

すると、面接のときにより客観的に自分のことを伝えられます。「私はこの知識が足りないので、入社したら学びたい」というように、足りない点を隠さず話しても構いません。正直に話したほうが、面接官は候補者の当事者としての本気度を感じ取ってくれます。

自分が仕事でどんな能力を鍛えてきたかがわからないという人は、職務経歴書を書いてみましょう。ポイントは、できるだけ詳しく書くこと。たとえば、「部長として、部下20人を率いる」ではなく、「経験のない若者20人を束ねて、半年で戦力化した」などと書くのです。すると、自分が仕事で鍛えてきた強みが立体的に見えてきます。

 

 

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「若手より自分を採用すべき理由」を客観的に

いくら人手不足でも、年齢構成の点や企業の将来を考えたら、30代後半や40代前半の人よりも若い人を採りたい、と考えるのが自然のことだ。それを打ち破るには、「なぜ、若い人よりも、30代後半の自分を採用したほうがお得なのか」を具体的に、客観的に話せるようにしておこう。

ところで、読者の皆さんの中にも、社会人大学院に通うことや、資格の取得を検討している人はいるだろう。社会経験を通じて「この分野の勉強が足りない」と気づき勉強しているのなら良いが、「転職に有利になる」「ハクがつく」と考えているのなら、やめたほうがいい。転職するときに有利になることはほとんどないからだ。あくまで学び直しの手段と考えたほうがいいだろう。

 

 

やりがちな失敗
「大企業の経歴」がむしろ疑いの元に!?

転職を成功させるには、「謙虚な気持ちを忘れない」ことも大切だ。とくに、大企業などで実績を挙げたことのある人が、中小企業に転職しようとするときは要注意。大手のやり方が染み付いているので、自分の会社と比較し応募先のいたらないところが目についてしまい、無意識のうちにちょっと見下したような態度をとりがちだ。そういう態度が見えると、「入社しても、前職と比較ばかりされてがっかりするかもしれない」と、敬遠される可能性もある。

大企業などで実績のある人が、小さな会社の面接に来ると、疑いの目で見られることも少なくない。「なぜ、わざわざ小さな企業に来る必要があるのか?」「何か問題でも起こしたのでは?」と勘ぐられる。きちんと転職のきっかけから応募にいたるストーリーを話せるようにしておこう。

 

45歳以上(ベテラン世代)

一般的にはマネジメント職や特定のスキルに特化した専門職であることが多い45歳以上。今の時代はまだまだ転職可能だが、若手に比べると条件が厳しいことも多い、ベテランやシニアの転職事情とは。

どこでも通用する最強のスキルとは?

好景気や少子化の影響で、45歳以上の人にも、転職の門戸が開かれてきました。とはいえ、転職が簡単にいくかというと、そうではありません。

40代も後半にさしかかれば、入社後、あれこれ教えなくても、すぐに即戦力になることが求められます。そうした能力や経験値がなければ、「わざわざ40、50代の人を採用することはない。もっと若い世代を採ったほうがいい」と判断されてしまいます。自分の市場価値を高めることを怠っていたら、転職は厳しいと言わざるを得ません。

もっとも、45歳を超えたベテランに求められるのは、専門性だけではありません。「人間性」も評価の対象になります。

たとえば、キツい仕事を任せてもへこたれない精的なタフさや、相手の気持ちを汲み取り、理解するコミュニケーション能力など。こうした、管理職にとって必要であり、歳を重ねたことで培われた人間性があれば、面接官もあえて40~50代の人を採ろうという気になります。

他社にも持ち運べるスキルのことを「ポータブルスキル」といいますが、実は、こうした人間性の部分こそが「ポータブルスキル」なのです。

抽象的な「人間性」を言語化しておこう

45歳以上で転職を成功させるには、こうした人間性の部分を面接などでアピールすることが重要です。

たとえば、精神的なタフさを示したいなら、失敗したプロジェクトや過酷なプロジェクトの経験を話し、「辛い思いをたくさんしてきたので、どんな辛いことでも耐えられます」とアピールすると良いでしょう。すると、「メンタルが強そう」と面接官に評価されることがあります。

また、相手の気持ちを汲み取る力を示すなら、「仕事で自信をなくしていた部下に対して、何時間も相談に乗りながら、仕事の与え方を工夫して、少しずつ自信をつけてもらった」などといった、部下に寄り添ったエピソードを話すと良いでしょう。

このように、抽象的で見えにくい人間性の部分を、きちんと「見える化」して話せるようにすれば、面接官の心に届くようなアピールができるはずです。

 

 

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「T字型」の経験をアピール

プレーヤーとマネジャー、いずれの採用にしても、45歳以上のベテランは、経験の豊富さをアピールしたいところだ。面接官が知りたいのは「仕事の守備範囲」と「その中でもとくに精通している分野」。なんでも浅く広く知っている人よりも、浅く広い経験がある一方で、精通している分野がある「T字型」の人のほうが、評価される。

たとえば、「人事にまつわるさまざまな仕事をしてきて、労務管理や研修などを幅広く手がけてきた」「その中でも、最も専門的に行なっていたのは採用です」といったことが言えればいい。こうした「T字型」の経験や実績についてスムーズに話せるよう、転職活動を始めたら、早いうちに自分の経験をまとめておこう。

 

 

 

やりがちな失敗
「扱いづらい人」と思われたらアウト

45歳以上の人に対して、採用する側が最も懸念しているのは、「扱いづらい人でないかどうか」。過去の自慢ばかりしたり、「この会社を変える起爆剤になる」と言って上から目線で批判しまくったり、という人をうっかり採用すると、簡単に解雇できないので、職場の雰囲気を悪くすることになりかねない。だから、面接官はその兆候がないか、注意して見ている。

にもかかわらず、面接で、扱いづらそうな態度を垣間見せてしまい、敬遠される人は少なくない。そう思われないためには、謙虚な姿勢を心がけるようにしよう。もし、20代の若い人とワイワイガヤガヤと仕事をしてきた経験を持っているなら、そのことも話したほうがいい。意外と面接官を安心させる材料になる。

 

《『THE21』2018年6月号より》

著者紹介

細井智彦(ほそい・ともひこ)

転職コンサルタント

1960年、京都府生まれ。同志社大学文学部心理学科卒。「人材紹介会社に在籍中に面接力向上セミナー」など各種セミナーを独自に開発。セミナー受講者はのべ10万人超。6,000人の転職希望者を内定に導いた実績から「日本一面接を成功させる男」と呼ばれる。企業(面接担当者)向けの研修も、大手からベンチャーまで330社以上に実施。著書に、『転職面接必勝法』(講談社)、『本当に「使える人材」を見抜く 採用面
接』(高橋書店)などがある。

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2024年12月

THE21 2024年12月

発売日:2024年11月06日
価格(税込):780円

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