2011年12月08日 公開
2022年10月06日 更新
「指示されたからやる」という姿勢では、よいイベントはできません。
全員に「参加感」をもってもらうことが私の仕事なのです。
吉田麻紀
(株)オリエンタルランド リゾートクリエイト部 イベントグループ マネージャー
1975年生まれ。98年、オリエンタルランド入社。2007年まで東京ディズニーリゾートのウェブサイト制作を担当した後、リゾートクリエイト部イベントグループに異動、今年の4月から現職。部下14人のうち、約半数は年上。
東京ディズニーシーの10thアニバーサリー『BeMagical!』の企画運営も吉田さんが担当した。
※本稿は、『THE21』2011年12月号(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
9月4日、東京ディズニーシーの10周年記念イベント「東京ディズニーシー10thアニバーサリー「"BeMagical!"」が始まった。震災の影響で約5カ月遅れでスタートしたこのイベントには、連日多くのファンが押し寄せている。
このイベントを企画・統括したのが、吉田麻紀さんだ。
吉田さんがリーダーを務めるイベントグループは、イベントのコンセプトをつくり、実現に向けて関係部署と調整を行なう。そのリーダーだけに「人を巻き込む強いリーダーシップ」が求められるが、吉田さんは強引に人を引っ張っていくタイプではない。むしろ彼女が表現するリーダーシップは、とても地味といえる。
その一端は、9年間担当したウェブサイト制作の仕事にも垣間見ることができる。東京ディズニーリゾートのウェブサイトは、各部門から多くの情報がウェブを担当する部署に集まり、担当者が精査しながら情報を掲載している。でも当時、情報を提供する部署は少なかった。ブロードバンドが普及しておらず、ホームページの重要性が理解されていなかったからだ。
「ホームページに掲載したい情報を自分で拾って歩きました。関係部署を訪ね、『この情報、載せてもいいですか?』って提案する活動を続けたのです」
ウェブサイトが重要なマーケティング手段として確立されるまで、この活動を一人で続けた。その5年後にチームとなり、各部門からも情報が集まるようになった。よい仕事をするには、関係者の「参加感」を醸成することが大事だと感じた。
そのポリシーが、彼女のリーダーシップのベースにある。たとえば「東京ディズニーシー10thアニバーサリー」は、東京ディズニーシーの節目となるイベン卜だけに、約2年の準備期間を要した。準備期間中、避けて通れないのが関係部署との調整だ。
1つのイベントを実現させるには、パーク内でショーを行なうエンターテインメント部門、装飾やモニュメントを担当するデコレーション部門、お土産ものを企画する商品部門など、常時6~7部門が関わる。関係者がひとつの方向を向いていなければ、世界最高峰のエンターテインメントは実現しない。「日中のほとんどの時間がミーティングで埋まる」ほど多忙な吉田さんだが、関係者とのつながりづくりには惜しみなく時間を投資する。
「関係部署が『イベントグループに指示されたからやっている』と思っていては、よいイベントはできません。関係者一人ひとりに、熱い気持ちがあるか。つまり全員に参加感をもってもらわねばならないのです」
10周年イベントの初日、パーク内で出会った関係者の笑顔が忘れられない、という。数百万人の来場者の満足のために、目の前の関係者の参加感を高める。地道に着実にリーダーシップを発揮し続ける吉田さんは、自分の立場をこう表現する。
「マネージャーといえど、結局私一人では何も実現できないのです」
取材構成:齋藤麻紀子/写真撮影:長塚 健
失敗を共有し、チーム全体の学習効果を高める
イベント準備が順調でないと、部下は徐々に委縮し始めます。でもたとえ遅れていても、その原因とリカバー方法が明確であれば私は怒りません。むしろその失敗を次のイベントで活かせるよう、チーム内で共有することを推奨しています。そうすることでみんな恐れずに自分の失敗を話してくれるので、チーム全体の役に立つのです。
小さなゴールを設定する
各メンバーの仕事に滞りをなくすことが、私にとって最大のタイムマネジメントです。でも、イベント準備期間はとても長く間延びしがち。だから、目安となる「小さなゴール」をメンバー自身に設定してもらっています。「いつまでに何をする」と主体的に決めてもらうため、仕事に前向きに取り組めるという効果もあります。
一緒に悩み、一緒に解決する
「イベントコンセプトをつくる」という仕事に正解はありません。ですから部下が悩んでいても、あえて自分の考えは提示しません。「ゲストに何を感じてもらいたい?」と問いかけ、「それはどのようにゲストに伝える?」と具体化させていく。一緒に悩み、考えることで、部下のなかにある「答え」を引き出します。
取材構成:齋藤麻紀子/写真撮影:長塚 健
更新:11月27日 00:05