2011年11月11日 公開
2024年12月16日 更新
《 『THE21』2011年11月号 総力特集:できるリーダーの「会社を変える力」より 》
- いま、ディー・エヌ・エーが求めているのはどんな人材ですか。
守安 ひと言でいえば、「何をするべきか」を自分で考えられる人でしょう。逆に、「何でもやります!」という人は求めていません。
現在はビジネス環境の変化が激しくなってきており、普通にやっていればそれなりに業績が伸びていくという時代ではありません。ルーチンワークを懸命にやったところで成功は期待できません。
とくに、われわれのインターネット業界は歴史が浅いだけに技術革新がつねに起こり続けています。その中で勝ち続けようとすれば外部環境の変化を見極める、絶えず自分たちのやり方を変えていくということが必須です。
自分で「どんな問題があるか」「どうすれば問題を解決できるか」を考え、変革を実行できる人材がどれだけ揃っているかが、会社の成長力に直結します。「何でもやります」と仕事を与えられるのを待っている人では困るわけです。
- 守安社長ご自身は、ディー・エヌ・エーの成長を牽引してこられたわけですが、これまで、会社とどのようなスタンスでつき合ってこられたのでしょうか。
守安 私が入社したとき、ディー・エヌ・エーはまだ社員が10人いるかいないか。会社と自分が一体とまではいきませんが、「自分が頑張ることで会社が成長する」と感じやすかったのは確かですね。
- 当事者意識が人一倍強いということでしょうか。
守安 そうです。たとえば、自分の勤務先について「ウチの会社はダメだ」「このままじゃ業境が悪化するよ」などと他人事のように批判する人もいると聞きますが、それならどうして自分が変えようとしないのでしょう。その会社の一員なら、会社をよくしようと考えるべきだと思うのです。
- 他人事に思っているうちは解決しない、と。
守安 「自分が頑張れば会社は変わるんだ」と思っている人、会社と自分が一体になっている人が多い会社ほど強いと思います。 逆に、「自分一人が何をいっても会社は変わらない」という人ばかりが集まると、ほんとうに会社は変われなくなってしまう。 実際には、ほんの数人が新しいものを生み出し、とんでもない価値を生み出す例はいくらでもあります。「Mobage(モハゲー)」にせよ「怪盗ロワイヤル」にせよ、開発したのは5人ほどのチームですから。
- 変革を起こせる人というのは、具体的にはどんなタイプの人材なのでしょうか。
守安 社内で大事にしている考え方で、「良質な非常識」というのがあります。常識だと思われていることを疑える感覚をもっている人です。
社内で定着している業務のフロー、あるいは業界慣習といったもののなかには非効率なまま放置されている習慣がたくさんあります。しかし誰もが「変えられないもの」「仕方のないこと」と思い込んでいることは多いです。
ほんとうは「これだけ環境が変わっているのに、ずっと同じやり方をしているのはおかしいよね」と声を上げなければいけない。それが「良質な非常識」を備えた人材です。
- 「良質な非常識」を発揮できる人材というのは、やはり目のつけどころや発想法が独特なのでしょうか。
守安 というより、まずは大前提としてマインドが高いです。自分から新しいことを生み出そう、チャレンジしてやろうという気持ちがないと難しいと思います。
- とはいえ、なかなか「自分の力で会社を変えられる」という自信がもてない人も多いと思いますが。
守安 そういう人は、おそらくチャレンジしたことがなく、いっても無駄だとあきらめている人ではないかと思います。
ほんとうにやりたいことがあれば、提案ひとつするにも徹底的に調査をして、誰よりも詳しくなったうえで上司などを説得するはずです。思いつきで発言して「何をいっても通らない」というのではダメです。
- 社長になる前から、いろいろな提案をあげることで会社を動かしてこられたことと思います。説得して人を動かすという点で、とくに心がけてこられたことはありますか。
守安 とにかくファクトを全部集めて、事実ベースで主張することです。「Aのほうがいいんじゃないの?」と言われたら「いやBにすべきです」と根拠を挙げられるように準備しておく。議論では機転を利かせることももちろん大事ですが、いちばん重要なのはファクトです。自分が扱う商品について勉強したり、競合を分析したりという程度のこともしないまま、戦って負けている人が結構多い気がします。
-お話をうかがっていると、守安社長は仕事に対して非常に強い心をもっているなと感じます。これまでに、「やる気がなくなった」というような経験はおありですか?
守安 私自身は、「やる気がない」ということがまずないんです。 そもそも私は「モチベーション」という言葉が嫌いです。よく、「失敗してモチベーションが下がった」などという人がいますが、ビジネスの場では戦っていけないでしょう。モチベーションというのはつねに一定より高いレベルに高めておくのが大切だと考えています。モチベーションに波があるなら、それを何とか一定に保つ努力をすることも必要でしょう。
努力をしても結果が出ずに、つらい思いをすることもあるでしょうが、それならその努力が無駄にならないよう、失敗を成長の機会とすべきではないでしょうか。なかにはそんなに努力もせずに他人や環境のせいにして、「モチベーションが下がった」という言葉を言い訳にしている人もいるように感じます。自分で考えて、自分でやってきた結果だと考えていれば、うまくいかないことがあっても「もっと頑張らなきや」と思えるはずです。
守安 功 (もりやす いさお)
1973年、茨城県生まれ。1998年、東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学を修了後、日本オラクル㈱に就職。翌年、創業間もない㈱ディー・エヌ・エーにエンジニアとして転職。モパオク、モバゲー、ソーシャルゲームといった大きなサービスの仕掛け人として、同社黎明期から拡大に貢献してきた。
2011年、初代CEO南場智子氏が退任し、代わって現職に。
更新:12月22日 00:05