2017年07月17日 公開
2022年12月21日 更新
一方、「弱み」は放置しておいていいのだろうか。
「もちろん、最低限の『デンジャーコントロール』は必要です。業界の最低限のルールや法律に関連することなどはしっかりと習得させておくべきでしょう。ただ、日本企業の人材育成は、ここにばかり注力し、結果、教科書的な人ばかり生み出しがちに思えます。デンジャーコントロールと『強みを伸ばす』ことは、同時並行で進めるべき。そこさえ押さえておけば、弱みを直そうとするのは『時間のムダ』だと言い切ってしまっていいと思います。
むしろ、弱みをオープンにすることで、マネジメントは非常にスムーズになります。実は、これがうまいのが弊社社長の藤田晋で、『これは苦手だから、任せる』とさらっと言ってしまう。でも、そう言われると任されたほうも頑張ろうと思いますよね。いわば『貢献できるスペース』が広がる。こうして権限委譲を進めながら、それぞれが得意分野に注力できるようになるのです」
かつて上司は「何でもできる人」でなくてはならなかったが、時代背景的にも、今はそれが難しくなっているようだ。
「現代は『コミュニケーションがばれる時代』です。上司が部下に言ったことが、同世代の人たちにネットを通じ一瞬で共有されてしまう。私は新卒採用の最終面接を行っているのですが、面接で何を聞かれたかという情報もすぐに共有されます。余談ですが、私は面接中、相手の緊張をほぐすため飴を用意していたのですが、その情報が出回って『●●味の飴を取るといい』『●●味はNG』などという都市伝説が勝手に生まれているほどです(笑)。
こんな時代ですから、指示命令だけで統制を取るのは難しい。ならば、弱みを認めて、明かしてしまうほうがいいのではないでしょうか」
部下の欠点よりも「強み」に着目し、それを伸ばしていく。ただ、実際には「部下の欠点ばかりが気になって仕方がない」という上司のほうが多いはずだ。
「人間はそもそも『人にダメ出しをしたい』という習性を持つ動物ですからね。そうして、自分の優位を確保したい。それは私自身も同じです(笑)。
ただ、言い換えれば、放っておいても欠点は目に入ってくるということ。だったら、むしろ意識的に強みに目を向けるくらいで、ちょうどバランスが取れるのではないでしょうか」
とはいえ、「部下の強みを引き出す」のはそう簡単ではない。そこで曽山氏が活用するのが「ツール」だ。著書『強みを活かす』(PHPビジネス新書)にも、数多くのツールが掲載されている。
「そもそも『自分の強みは何ですか』と聞かれて、すぐに答えられる人のほうが少ないですよね。では、どうやったらそれぞれの人の強みを見出せるか、さまざまな試行錯誤を重ねてきました。本書に載せられているツールは、こうした試行錯誤を経て効果があると実証されたものばかりです。
中でも1つ挙げるなら『価値観9ブロック』です。これは3×3の9マスの中心に自分の名前を書き、自分が大切にしている価値観をその周りの8マスに埋めてもらうというもの。フォーマットがあるだけで、価値観がどんどん出てくるし、それを眺めていると、自分が本当に大事にしていることが何かが見えてくる。面談でも、これを元に話をするとぐっとスムーズに進みます。『想像力』『常に前向き』『嘘をつかない』『平和』など、本当に想像がつかないほどさまざまなものが出てきますよ。ぜひ一度、体験してみてください」
日本には「上司は嫌われてナンボ」という思想がある。
「確かにその覚悟はすごいなと思うのですが、私はできれば、人に嫌われたくない(笑)。もちろん、嫌われずに成果が出ないのは最悪ですが、嫌われずに成果が出るならそれに越したことはありません。そのほうが人生も楽しいですよね。ぜひ、我々の取り組みを参考にしていただいて、そんな楽しさを味わっていただければと思います」
更新:11月25日 00:05