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星野リゾートの現場力(17)星のや東京の「茶の湯体験」

2017年08月01日 公開
2023年05月16日 更新

星野佳路(星野リゾート代表)

世界に羽ばたく「日本旅館」の第一歩

日本を代表するリゾート運営会社・星野リゾートでは、「遊び」や「楽しみ」の中に仕事のヒントを見つけたり、逆に仕事をきっかけとした趣味を楽しんだりしている社員が多いという。本連載では、そのような「遊びと仕事」の融合の事例を、代表の星野佳路氏のコメントとともに紹介。本誌掲載の最終回となる今回は、都心のビジネス街・大手町に昨年オープンした「星のや東京」より、日本のおもてなしの心を伝える「茶の湯体験」担当者をリポート。《取材・構成=前田はるみ》

 

ビジネスの中心地にある非日常空間

東京・大手町に昨年七月にオープンした日本旅館「星のや東京」。一歩中に足を踏み入れると、畳の香り漂う和の空間が広がっており、ここがビジネス街であることを忘れてしまうほどだ。

「日本旅館は日本文化の集大成」という考え方から、この施設ではゲストが茶道を体験することができる。お茶を飲むだけでなく、ゲスト自身がお茶を点てることで、「日本のおもてなし」を体験してもらおうというものだ。企画したのは、フロントマネジャーの大友一也氏だ。

「抹茶は海外の方にも人気ですが、日本でお点前を体験したいと思っても、実際に点てる機会はないのが実情です。お客様が気軽にお点前を体験でき、自国に戻っても抹茶を楽しんでいただけるようにと始めました」と大友氏。体験で使った茶碗と茶せんは、お土産としてゲストに手渡される。茶の湯の体験は、外国人客だけでなく、日本人客にも好評だという。

 

 

茶道のおもてなしから学んだ「気づく力」

プライベートでもお茶の稽古に通っているという大友氏。お茶との出会いは、前任地である「星のや京都」時代だった。季節によって変わる茶室のしつらえや、お茶の所作の一つひとつに込められた、「おもてなしの心」に惹きつけられたという。

「たとえば、お茶を点てる前に、お茶碗にお湯を入れて温めておくことで、お茶を美味しく飲むことができます。そのお湯を捨てる際、時計の三時方向に流すのですが、これはお客さまが飲むときにお茶碗を回すと、ちょうどお湯を通して温めたところから飲めるからです。なるほど、と思いました」

 茶道で学んだおもてなしの考え方は、旅館での仕事や接客にも生かされている。

「お茶を学び始めて、気づく感性が磨かれたと感じています。お客さまがどういう状況かを考えて、お客様に応じた心配りができるようになりました」

 もてなしこそ日本旅館が得意とする技であり、星野リゾートが海外展開を狙ううえで強みとするものである。

「海外の道路を日本車が走るように、世界の大都市に日本旅館がある時代を作る――代表がよく言うこの考え方には私も共感します。それを目指すうえでも、星のや東京を成功させなければなりません。これは東京で生まれ育った私にとっても、またとない挑戦の機会。成果にどんどん関わっていきたいです」

 

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著者紹介

星野佳路(ほしの・よしはる)

星野リゾート代表

1960年、長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。日本航空開発(現・JALホテルズ)に入社。シカゴにて2年間、新ホテルの開発業務に携わる。89年に帰国後、家業である㈱星野温泉に副社長として入社するも、6カ月で退職。シティバンクに転職し、リゾート企業の債権回収業務に携わったのち、91年、ふたたび㈱星野温泉(現・星野リゾート)へ入社、代表取締役社長に就任。

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