2017年04月24日 公開
2023年09月08日 更新
80過ぎという年齢を感じさせない「ムツゴロウさん」こと畑正憲氏。この50年間、ほぼ休みなしでアグレッシブに活動してきたという。
そんな氏の目から見ると、今の日本人は細かいことを気にしすぎで、どうも窮屈に生きているように感じられるそうだ。
自身の波瀾万丈の半生を振り返っていただきながら、その人生論、仕事論について語ってもらった。
作家として活動しながら、かつてはロケで1年の半分は海外にいる生活を30年も続けていたという畑氏。それでも、病気や体調不良で休んだことはなかったという。
「私は飛行機や車の中ではどうしても文章が書けないもので、飛行機の待ち時間や現地での空き時間が貴重な執筆のチャンスでした。空港の片隅で原稿用紙を広げたり、人里離れた明かりのない村では、懐中電灯をガムテープでつるして原稿を書いたり……。
ロケから戻ると締め切りが待っているので、常に緊張した状態が続いていました。緊張感は人の免疫力を高めるようで、この50年、一度も風邪すら引いたことがありません。
一方、責任感から休むわけにはいかない、ということもありました。アフリカロケに行った矢先にウシに激突され、ろっ骨を折ってしまったことがあるのですが、ここでロケをやめてしまったらスタッフ全員に迷惑をかけ、金銭的な損失も膨大になってしまう。痛くてもごまかすしかないと、自分でテーピングをして1カ月のロケをやり切りました。
日本に帰ってしばらくして、どうも呼吸をするとき変な音がするなと病院に行ったら、ろっ骨が変な方向に曲がってくっついてしまっていました。
あるいは、アマゾンロケに行く直前に馬に足の小指を踏まれてしまい、小指が親指と同じくらいまで腫れ上がってしまったこともあります。3サイズくらい大きな靴を用意して、なんとか足を入れて、ロケに出かけました」
なんとも壮絶な体験ではあるが、畑氏はそこから「気力というものの重要性」を学んだのだという。どんなときも平静でいたほうが、結局、仕事もうまくいき、回復も早い。
「これはある意味、動物たちに教わったとも言えます。生き物と接していると、ゾウに振り回されて骨にひびが入ったり、ライオンに咬まれたり、いろいろあるわけです。でも、そんなときほど平気な顔をして、『おぉ、咬んだか。ヨシヨシ』と頭をなでる。弱みを見せれば、その瞬間に攻撃してくるからです。
そんな毎日でしたので、当時は常に200~300カ所、身体じゅうに傷がありました。これほど多くの傷をいちいち消毒していたら、すべて化膿してかえって大変です。だから私は放っておくのですが、それでも傷が治るのは非常に早かった。
もちろん、無理のしすぎは禁物ですが、細かいことを気にしすぎるべきではありません。人間の気力や生きる力というものを馬鹿にしてはいけないと思います」
更新:11月26日 00:05