2017年06月12日 公開
2017年06月14日 更新
ミスといえば、先述したように突発的なことや、仕組みの未整備で起きるものばかりではない。毎日提供している商品にも不具合が起きる可能性がある。
「モスバーガーでは、『アフターオーダー方式』を採用しています。ご注文を受けてから一つひとつ手作りしているため、作り手の技量で完成品に差が出ることもあります。それをより安定した商品の提供をしたいとの思いで『製造勉強会』を実施しています。
この勉強会は、新商品が発売されるタイミングなどに各地域で行なわれます。実際の厨房に集まり、そこで新商品の作り方を学ぶとともに、既存の商品についても確認します。一つひとつの食材が適正量でなければ、美味しい商品はできません。ソースの量がほんの少し違うだけで、全体のバランスが崩れるのです。それを防ぐために定期的に集まり、作り方を見直していくことで、最終的にミスをなくしています。
今まではキャンペーン開始直後は、お客さまサポートにお叱りのお言葉が多く入っていました。新商品の製造に慣れていないために、お客様にご迷惑をお掛けしていたのです。しかし、この勉強会が始まってからは、それらが改善されキャンペーンが始まってもお叱りが増えることがなくなりました」
このような勉強会は長く行なわれてきたが、とくにここ2、3年の間に活発に行われるようになったという。
「2015年に原材料費の高騰、原油高など企業努力ではどうしても吸収できなくなり、やむをえず価格改定を実施することになりました。そこでどのようにお客様離れを防ぐかが課題になりました。
同時に、多くの加盟店オーナーも大きな危機感を抱き、お客様に値上げを理解していただくには、さらに美味しい商品を提供しなければいけないと考えました。勉強会が活発になったのは、本部と加盟店との思いが合致したからです」
店長同士のつながりが強くなるという効果も。キャリアがまったく違う人が集い、互いに教え合う学び場となった。
「継続的に勉強会を開くことでは、製造のノウハウを持ち帰り、店舗スタッフに伝えていきます。その結果現場力が上がり、良い商品やサービスを提供できます。それによってまたお客様にご来店いただく。とても良いスパイラルができていると思います」
「低アレルゲンカード」で取り違え防止
「低アレルゲンメニュー」の注文時に、間違いなく商品を提供するために渡している『低アレルゲンカード』。注文時に渡し、商品を提供する際に回収する。
(プロフィール)
桜井卓也
Takuya Sakurai
〔株〕モスフードサービス CSR推進室 お客さまサポートグループ グループリーダー
1962年、東京都生まれ。85年、モスフードサービス入社。直営部で店長を歴任後、スーパーバイザーやインストラクターを経験。2008年よりマーケティング室などを経て2015年よりCSR推進室お客さまサポートグループに着任。顧客と社内の掛け橋的役割を担う。
《『THE21』2017年6月号より》
更新:11月22日 00:05