2017年02月15日 公開
2023年05月16日 更新
40代にもなると、学生時代にしていた英語の勉強法を忘れている人が多いだろう。実は、これも英語を習得するうえでの大きなアドバンテージだと菊間氏は言う。
「学校で教えている勉強法は、あくまで受験のためのもの。実践的な英語をマスターするためのものではありません。それどころか、英語の習得に悪影響をおよぼすことすらあります」
その最たるものとして菊間氏が挙げるのは「単語のみを丸暗記すること」だ。
「英語学習を始めるとき、単語帳を買って単語のみを覚えようとする人がいますが、単語だけを覚えても、その使い方がわからなければ実際には使えません。単語を単独で覚えるのはナンセンス。『英語はセンテンス(文)単位で覚えて初めて使えるようになる』ということを肝に銘じておきましょう」
また、「日本語の文を英語に直訳する」という勉強法も、弊害のほうが大きいという。
「日本と英語圏では、文化の違いがあります。ですから、日本語のやり取りをそのまま直訳しても、実際には使えないことが多いのです。
たとえば、ビジネスメールの文章。日本では『お世話になっております』から始めることが一般的ですが、英語圏では『こういう目的でメールを送りました』という目的を伝える文から始めます。『お世話になっております』のような挨拶文をそのまま英訳して、メールの冒頭に入れても、相手は困惑するだけです。
ひたすら日本語を英訳する習慣はもうやめましょう。自然な英語表現にたくさん接し、その表現をそのまま使ってください。そうすれば、皆さんの英語はとてもわかりやすいと思われるのです」
実践で使える英語をマスターするには、シチュエーション別に、英語圏の人にとって定番の会話例をフレーズで覚える必要がある、と菊間氏は言う。
「たとえば電話で名乗るときには『This is ◯◯ speaking.』。外線の電話に出るときには、会社名を言ってから『May I help you?』と言う、といった具合ですね。『自分が話したいことをどう英訳するか』を考えるのではなく、『英語圏の人はどう表現しているのか』を考えて、そのフレーズをきっちりと覚えるのです。まずはその段階をきちんと踏むことで、初めて自分が話したいことが言えるようになります」
あるシチュエーションに置かれたときに、そのシチュエーションにおいて定番のフレーズが自然と口から出てくるようになるためには、何度も「音読」をすることが大切だ。
「音読は、リスニング能力を高めるうえでも非常に重要です。人間は、自分が発音できない音はなかなか聞き取れません。カタカナ英語で話していると、英語特有の音が聞き取れず、リスニング力が伸びないのです。ですから、発音は意識的に直しましょう。音声教材のナレーターと同じように発音するよう努めてください」
ポイントは「リエゾン」を意識することだ。
「リエゾンとは、単語の最後の子音と、次の単語の最初の音を連結して発音することです。たとえば、『get you』を『ゲッチュー』、『an apple』を『アナポ』というように発音すること。これを理解して音読すると、ネイティブスピーカーの発音に近づきます。
また、強弱をつけて英文を読むことも重要です。日本人は、英語を話すとき、抑揚をつけずにフラットに話す傾向があります。これはネイティブスピーカーにとっては非常に聞きにくい。英語は音楽のようにリズムがある言語なので、大げさなほどに抑揚をつけて、ちょうどいいぐらいです」
ただし、ネイティブスピーカー並みの発音を目指す必要はないも言う。
「ある言語学者によると、ネイティブスピーカーのような完璧な発音は思春期前でないと身につけるのが難しいらしいです。しかし、そのレベルまでいかなくても大丈夫。ビジネスシーンでも、きれいな英語を話しているのは米国や英国など英語圏の人だけで、ほとんどの国の人は自国訛りの英語を話しています。要は、通じるレベルまで身につければ十分なのです」
《取材・構成:杉山直隆》
《『THE21』2017年2月号より》
更新:11月23日 00:05