2017年01月08日 公開
2017年01月08日 更新
「文字」関連の書籍が大好きなもので、タイトルに惹かれて本書を購入。
で、結論から言うと、文字の起源についての話はほんのちょっとだけで、大半が著者のヨーロッパ洞窟探検紀行だった。
なんだか肩透かしを食らったようで悔しいので、ここで紹介する次第です。
ラスコーが有名だが、西ヨーロッパには氷河期の人類の残した洞窟壁画が他にも多数残っており、それらの大半は観光地化されることもなく、放置されるがままになっている。
著者はそんな入口すらわからないような洞窟を探り当て、人ひとり入れるかどうかの穴を這いつくばって進み、念願の壁画を探り当てていく。そして、パイソンや馬といった華やかな壁画にはわき目も触れず、ひたすらその周辺に散りばめられている線とか丸とかバツとかの記号を集めて回るのだ。
まさに現代の川口浩探検隊。ただ、やっていることは恐ろしく地味な作業。その姿勢には感嘆の念を禁じ得ないが、そんな話が延々と続くので、正直、よほどの洞窟マニア(いるのか)でないとちと読むのがつらいところだ。
とはいえ、その結果導き出される「これらの記号には共通性があり、それは人類がアフリカから各地へ散らばる前からあったものかもしれない」という仮説は非常にスリリング。この仮説が正しければ、漢字もヒエログリフも楔形文字もマヤ文字も、すべて起源は一緒と言うことになり得るからだ。
はっきり言って実証するのは難しいと思うが、知的好奇心を掻き立てられることは確か。洞窟好きの人は最初から、そうでない人は最後のほうだけでも読んでほしい一冊だ。
執筆:Y村(「紀行」担当)
更新:11月22日 00:05