2016年11月30日 公開
2022年06月06日 更新
普通は、取引においては双方が得をする「ウィン・ウィン」になるための知恵を働かせるものだと思う。しかし、トランプはそれをたわごとだと言う。
「素晴らしい取引とは、あなたが勝つ取引であり、相手が勝つ取引ではない。あまたは相手をぶっ潰し、自分の利益となるものを持ち帰る必要がある」と言うのだ。大統領としての外交にも、この強気さで押し切る場面が出てくるのだろうか。日本にとって手ごわい相手だ。
トランプの大統領選挙におけるキーワードは「アメリカを再び偉大にする」だった。かつて多くのアメリカ人は自国に自信を持っていたが、今や「普通の国」になってしまったと失望する人は多い。そんな敗北感や不安を抱く人たちが、トランプを支持したのである。トランプは、「いつが最後だ、アメリカが何かに勝利したのは?」と問いかけ、「私の率いる数多くの素晴らしい会社を見てくれ。私は指導者としてファンタスティックなまでに成功している」と自分の成果を誇る。「私ならできる」と思わせる、なかなかの扇動法だ。
これまではビジネスのために強欲だったが、今後は母国のために強欲になる。トランプの理想は、どこまで実現するのだろうか。
《著者紹介》
桑原晃弥
Teruya Kuwabara
経済・経営ジャーナリスト
1956年、広島県生まれ。慶應義塾大学卒業。業界紙記者を経てフリージャーナリストとして独立。トヨタからアップル、グーグルまで、業界を問わず幅広い取材経験を持ち、企業風土や働き方、人材育成から投資まで、鋭い論旨を展開することで定評がある。著書に、『ウォーレン・バフェット 巨富を生み出す7つの法則』(朝日新聞出版)、『「ものづくりの現場」の名語録』(PHP文庫)などがある。
更新:11月22日 00:05