2016年12月15日 公開
2023年05月16日 更新
中には、上場をして、市場や株主からの利益へのプレッシャーが強くなりすぎると、当社の強みであるクリエイティブな発想の幅が制限されてしまい、挑戦的なモノ作りができなくなるのではないかという心配をする人もいるかもしれません。しかし、社長の私を含め、当社の社員はもともと「数字なんかどうでもいい」と思っていましたから、「数字へのこだわり」という拘束力が働くことで、ちょうどよくなるのではないかと思っています。
そもそも、クリエイティブは「疑う」ことから始まります。たとえば私は、「今日のお昼は牛丼を食べたいな」と思ったときに、「俺は今、牛丼を食べたいと思っているけれど、本当にそうなのか?」ということまで疑います。こうしたすべてを疑う姿勢を貫いている限り、発想の幅が狭まることはこれからもないでしょう。利益へのプレッシャーとはまったく関係のないことです。
それに、本当の意味で多くの人を喜ばせることができる企業になれば、絶対に利益も出るはずです。クリエイティブと利益へのプレッシャーは両立するはず。タイムラグはあるかもしれませんが、人を喜ばせる量が多ければ多いほど、最終的には大きな利益につながると思っています。
当社の判断の基準は「お客様がより大喜びするのは、どちらなのか?」です。今年の秋以降、いくつかの新製品の発売を予定していますが、そこで追求しているのは「こういうモノがあったら嬉しいな」とお客様が大喜びしてくれるモノを作ることです。
たとえば、9月に発表した電気ケトルは、持ちやすさや注ぎやすさ、湯切れのよさといったものをトコトンまで突き詰め、実現しています。
年明けにも、炊飯器などの製品を予定しています。いずれも、デザイン性だけでなく、技術的なイノベーションがたっぷり入っていて、お客様に「びっくりする美味しさ」を感じてもらえる製品に仕上がっていると自負しています。
規模が大きくなって、上場をしても、「最近は大した製品が出なくなったね」と言われるようでは意味がありません。上場は、すごい製品を作り続けるための手段です。今後ともすごい製品を作り続けて、お客様に大喜びしてもらえる企業でありたいと思っています。
【最終回】へ続く
《取材・構成:桑原晃弥 写真撮影:まるやゆういち》
《『THE21』2016年12月号より》
更新:11月22日 00:05