2016年11月09日 公開
2023年05月16日 更新
だからといって、第一線の広報担当者が自らの勝手な判断で、あることないこと(ないことを説明してしまうのはそもそも論外ですが……)語ってしまうのは大問題です。シビアな追及から解放されたい一心で「対外公表不可」の内容を漏らしてしまうことは、企業や組織として絶対に避けなければなりません。
そのためには、あらかじめ「記者からの追及次第ではここまでなら言ってもよい。ただし、その場合でもここから先は死守」という明確なライン(最終防御線といってもよいでしょう)について、企業や組織内で認識を共有・調整しておくことが重要です。これはビジネスを巡るシビアな交渉事においても全く同じです。
そういう観点から考えると、危機時のコミュニケーションに際しては、戦いは目の前の「敵」(記者や交渉先)のみならず、「味方」(経営幹部・上司、あるいは同僚や従業員)内部での調整段階こそがより重要な意味を持ってくるのです。
そして、これら「敵」と「味方」双方とのコミュニケーションを円滑に行なうためには、平時における関係構築と日常の情報交換がなにより欠かせません。
そして、戦時になったら敵の狙い(思考パターン)と兵力(情報網)を瞬時に把握するとともに、味方の持ち弾の種類と量(言ってよいこと、悪いこと)、使い方の段取り(言うべき順番)を自分なりにイメージしておくのです。
「情報は交換してはじめて意味を生み、深みを増す」というのは、筆者二人の共通の実感です。
広い世の中、自分自身から見えている景色だけが全てではありません。
このことは、日常業務はもちろんのこと、企業や組織の内外を問わず、あらゆる局面におけるさまざまな人との関係性構築と情報交換において忘れてはなりません。
読者のみなさんが今後直面するであろうさまざまピンチを乗り切る術を獲得する「きっかけ」として本書がお役に立てれば、著者としてこのうえない喜びです。
更新:11月26日 00:05