2016年07月31日 公開
2016年07月31日 更新
世界には数多くの魅力的な鉄道路線がある。海沿いを走る絶景鉄道、氷河を眺められる山岳鉄道、ユニークなサービスを誇る観光列車、あるいは、超高速で走り抜ける最新車両……。
そんな魅力的な鉄道に対し、まさに対極に向かって全力疾走しているのが「地下鉄」だろう。なんの変哲もない車両。駅舎もなく、どこも同じような乗り場。なにより景色が一ミリも見えない。乗りたいから乗る、というより、乗らねばならないから乗る、という乗り物だ。
なのになぜか、「地下鉄」に心惹かれる人は多い。
私もその一人だが、そんな好事家、世の中にそれほど数が多いとも思えない。
だからこそ、地下鉄の魅力を、大判カラーで豊富なビジュアルとともに見せる本書「世界の地下鉄」を見つけたときの正直な感想は「正気か?」だった。
手に取ってめくってみると、かなり本気の作り込み。
「これはやっぱり正気じゃない」と考えて、レジに持っていくことにした。
そして家で開いて、気が付いたら小一時間経っていた。
なんというか、路線図を眺めているだけで楽しい。
それはおそらく、地下鉄というものが本当に街のコアとなっている場所を走っているからだろう。駅名一つひとつに物語が感じられるのだ。
地下鉄は市民の生活に強く密着している。だから、路線を眺め、駅名をつぶやいていると、知らない街の市民にでもなったような気分が味わえる。
「テュイルリー駅」「バスティーユ駅」などとつぶやくだけで、気分はパリジャン。そんなところが、地下鉄の、というより「地下鉄路線図」を見る楽しみなのかもしれない。
ちなみに豪華なビジュアルは主に、この路線図を見せるために使われています。素晴らしき無駄遣い。
今後もこういう本が出続けてくれることを期待したいです。
執筆:THE21編集部 Y村(「紀行」担当)
更新:11月23日 00:05