2016年06月22日 公開
2023年01月10日 更新
近年、「副業」を認める企業が増えてきている。なぜ今、副業が奨励されるのだろうか。すでに副業を認めている、ロート製薬、オイシックス、サイボウズの3社をレポートした。
2016年2月、ロート製薬㈱が正社員の副業を認めたことは大きな話題となった。従業員数1500人規模の大企業では初の試みである。
「社外チャレンジワーク」と名づけられたこの制度は、社員自らが自発的に立候補して人事制度の改革に携わる「ARK-PJ(あしたのロートを考えるプロジェクト)」から生まれた。同プロジェクトは2003年より不定期に実施されており、2014年に実施されたプロジェクトでは、副業を認定する制度の他、社内の複数の部門・部署を兼任できる「社内ダブルジョブ」制度も同時に新設された。
「ロートは、企業として社会に貢献する『自立した人』を排出することも、大きな役割の一つであると考えています。企業理念の『7つの宣誓』に、『主役は人、一人ひとりが自らの意志と力で自立し、組織を動かしていきます』という文があるように、人の力や成長を非常に大切だと考えてきたのです」と、ロート製薬広報・CSV推進室の吉本有希さんは言う。
ロート製薬では、2013年以降、農業や再生医療などの新規事業への参入により、社外の人とともに働く機会が増え、社内では得られない大きな経験が社員の成長につながることを実感。そのことも、今回の副業導入の後押しとなった。
副業は、本業に支障のないものであればとくに制限はなく、人事による審査の後、最終的に認定される。まだ審査段階ではあるが、社内では「自分なら何をしよう?」と考え、ワクワクするという声が多いという。
「個人でもロートでも、新たなチャレンジには、『人』の力が必要です。自立・自走する人を一人でも多く育てたいと思います」(吉本さん)
創業60年を超える大企業の今後の動向に注目が集まる。
安全性、栄養価、価格、味といった観点で厳選された食材を、宅配などで届ける「Oisix(オイシックス)」を運営するオイシックス㈱は、兼業や副業を認める制度を導入して約2年になる。
制度導入のきっかけは、優秀な人材を採用するチャンスを確保するため。優秀な人材は、すでに起業していたり、NPOで活動をしている人も多く、兼業・副業を認めない社内規則がボトルネックとなる懸念があった。より優秀な人材を逃がさず、会社のパフォーマンスを上げるためには、ボトルネックとなるものをなくし、柔軟に対応していこうという考えのもと制度化された。
また、髙島宏平社長が、東日本大震災で被害を受け、復興を目指す東北の生産者への長期的な支援を目的とした一般社団法人「東の食の会」の代表理事を務めていることもあり、本業以外の社外の活動をすることへの理解も備わっていた。
「最初は転職者の採用でチャンスを逃さないため、と思っていましたが、社内からも続々と申請があり、現在、10名以上がこの制度を活用しています」と、オイシックス広報室の大熊拓夢さんは説明してくれた。
オイシックスが認める副業は、「本業に良い影響を与えるもの」「本人のスキルアップ・成長につながるもの」と規定されている。社員本人が申請し、人事の担当者や上司と面談を行なったのちに認められる。その際、なぜそれが自分に必要なのか、なんのためにやるのか目的を明確化させるという。これは、副業が有益なものか判断する審査に加え、軸をぶらさずに副業を続けてもらうためだという。
副業認定者の出勤日や時間帯は面談を通じて決定され、本業に悪影響を及ぼしていると判断されたときには条件が見直される。また、社外活動の報告は人事考課面談などで定期的に行なわれており、上司も内容を把握しているので、副業の効果をきちんと判断してくれる。
社外で、会社では得られない経験やスキルを積み、人脈を構築することは、会社にも大きな効果をもたらす。また、そのスキルを活かして社内でのパフォーマンスが上がれば、それは本業の評価にもつながるという。
「マーケティング部門の役員が、マーケティング支援の会社を別に経営していたり、人事の社員がライター業を副業にしていたりします。それぞれ本業にもいい影響を及ぼしていて、人事の社員の場合、採用サイトなどに文章を書く機会が多いので、社外で身につけたライティング力が活かされていると思います」(大熊さん)
この制度は社員にも好評のようだ。
「オイシックス以外でもチャレンジできる環境を整えたことで、社員の離職率減少にもつながっているようです」(大熊さん)
制度が開始されて2年。今後も後に続く人がたくさん出てきそうだ。
更新:11月25日 00:05