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会社に忍び寄る「LINEいじめ」の実態

2016年03月30日 公開
2023年01月23日 更新

大槻智之(大槻経営労務管理事務所統括局長)

お客様との連絡先交換を断れず……

ショップやホテルのフロントなどの内装をデザインする会社に営業として勤務するBさん(女性・28歳)は、「お客様とのLINEでの連絡先交換はしません」と話す。過去にBさんは、とあるホテルのフロントロビーのデザイン受注のため、担当者と面会をした際、「これで受注できるなら」と思いLINEのIDを交換してしまったそうです。

はじめは見積もりの依頼や、詳細の問い合わせなどが主な連絡内容だったのが、「いつの間にか食事の誘いなども来るようになった」そうです。上司に相談しても、「それで数字あがるなら行ってくれば」とあまり真剣に取り合ってくれず、一人で悩みを抱え込んでしまったとのこと。

そして、「一度きりと思い、食事に行ったのが失敗でした」。最初は紳士的でしたが、お酒が進むうちに徐々に「セクハラに近い行為をされた」ため、半ば強引に席を立ったそうです。

その後は、再度上司に相談したところ、会社間で話し合いがもたれ、先方も担当者が変わり、無事受注することができたそうです。

今では、お客様に失礼にならないようにお断りするために「当社では、お客様とのLINEやフェイスブックのやり取りは規則により禁止されています」と言って対応しているそうです。

 

LINEトラブルを防ぐための「3つの方法」

このように、LINEによるトラブルは、学校や地域活動に収まらず、会社でも発生しているのです。そして、その“手軽さ”から行き過ぎてしまい、“パワハラ”や“セクハラ”といったトラブルに発展してしまうというわけです。

これらを防ぐには、「1就業規則の整備」「2社員教育の徹底」「3通報窓口の利便性の向上」があげられます。

1 就業規則の整備は、服務規律等にしっかりと

“LINE”や“フェイスブック”“ツイッター”といったSNSを想定した服務を定めておく必要があります。これらは、ハラスメントに限らず、情報の漏えいも含めてキッチリと規定するべきです。また、顧客や取引先、提携先に対するSNSのルールを定めておくのも対策の一つでしょう。

2 社員教育の徹底は、なるべく具体的にハラスメントになってしまう事例をあげて教育する必要があります。「相手が不快だと思っていなかった」や「教育の一環」といったように、ハラスメントとは認識していないことが少なくないようです。これらは、SNSを通してコミュニケーションを取っていることにより「わかり合えている」と誤解した親近感を抱いてしまい、一線を越えてハラスメントへと進んでしまっているのです。それには、社内でコミュニケーションとハラスメントとの違いの「線引き」を共有するような教育も効果的です。

3 通報窓口の利便性を高めるには、まずは、その存在をしっかりと周知することです。そして、通報したことにより、通報者が不利益とならない仕組みを作ること。また、アンタッチャブルなところを作らないことが何よりも大事です。

そして、通報後は事実確認をしっかりとすることと、それに対する懲戒等の処分を慎重にすることで、通報しやすい環境が整えられるでしょう。

“社内のLINEいじめ”は、上記①~③を整えることと、会社がLINEいじめに限らず、「あらゆるハラスメントを許さない」という強い意志を持ち、社員を守ることがなによりも重要です。

著者紹介

大槻智之(おおつき・ともゆき)

大槻経営労務管理事務所 統括局長

1972年、東京生まれ。2010年、明治大学大学院修了。経営学修士。
1994年4月に大槻経営労務管理事務所に入所、社会保険労務士法人への改組にともない役員に就任。2011年に統括局長就任。13年、(株)オオツキMを設立、代表取締役に就任。人事交流会・海外進出サポート・各種セミナー、人事スクール事業を提供する「オオツキMクラブ」の運営をスタートさせる。さらに同年、海外進出サポート充実のためOTSUKI M SINGAPORE PTE,LTD.を設立し代表取締役に就任する。14年には社会保険労務士として企業の海外進出をサポートするためSHAROUSHI OTSUKIOFFICE SINGAPOREを開設した。

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